子どもの口腔機能は、食べることだけでなく全身の発育や健康との関わりも注目されている。今回、日本の小学生約1,200人を対象とした研究で、よくかめる小学生ほど体力が高い傾向があり、その関連は男子でより顕著であることが明らかになった。研究は大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の平松里彩氏、髙阪貴之氏らによるもので、詳細は7月6日付で「Journal of Dentistry」に掲載された。子どもの体力は、現在の健康状態だけでなく将来の健康にも影響するとされ、体力に関わる要因を明らかにすることは公衆衛生上の重要な課題となっている。一方、咀嚼機能は食物をかみ砕いて栄養を摂取する上で重要な役割を果たすだけでなく、成人や高齢者では身体機能やフレイル、生活の質(QOL)との関連も報告されている。しかし、子どもの咀嚼能力と体力との関連については十分な検討が行われておらず、特に総合的な体力との関連や男女差を調べた研究は限られていた。こうした背景から、著者らは日本の小学生を対象に、総合体力スコアを用いて咀嚼能力と体力との関連を検討し、さらに男女差についても解析した。研究では、大阪MELON研究(Mastication research in Elementary school student teaching applying LONgitudinal Study)の一環として、大阪市内29校の市立小学校に通う小学4年生1,225人(男子608人、女子617人)を対象とした。2023年4月~2024年3月に身体測定や歯科検診を実施し、咀嚼能力と体力との関連を調べた。咀嚼能力は、色が変化するガムを1秒に1回のペースで1分間かんでもらい、60回咀嚼後の色の変化を専用アプリで解析して評価した。体力については、握力、上体起こし、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの7項目を測定し、これらを基に総合体力スコアを算出した。さらに、身長や体重の影響を考慮した統計解析を行い、咀嚼能力と総合体力スコアとの関連を検討した。解析の結果、咀嚼能力は、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、ソフトボール投げ、および総合体力スコアと有意に関連していた。男女別では、男子で上体起こし、20mシャトルラン、ソフトボール投げ、総合体力スコアとの関連が認められ、女子では20mシャトルランとの関連が認められた。さらに、身長や体重などを考慮した解析では、全体および男子で咀嚼能力と総合体力スコアとの有意な関連が認められたが、女子では有意な関連はみられなかった。ただし、性別によって関連の強さが異なることを示す統計的な差は認められなかった。著者らは、女子で明確な原因が認められなかった背景として、発達段階や生活習慣など今回評価していない要因が影響した可能性を挙げている。著者らは、咀嚼能力は口腔機能の指標にとどまらず、学童期の身体的な発達や機能状態とも関連する可能性があると指摘している。今回の研究は横断研究であるため因果関係は明らかにできないものの、子どもの健全な成長を支える観点から、適切な咀嚼習慣や口腔機能の発達を促すことの重要性が示唆されたとしている。(HealthDay News 2026年8月3日) Abstract/Full Texthttps://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0300571226005373?via%3Dihub Press Releasehttps://www.dent.osaka-u.ac.jp/20260727/18962 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock