せん妄は、注意・意識・認知機能が急性に変化し、患者の安全や治療経過に影響する。今回、専門チームへの紹介を経て診断されたせん妄には、認知症、せん妄既往歴、大量飲酒が関連することが、2万人超の入院患者を対象とした研究で明らかになった。研究は、奈良県立医科大学附属病院精神医療センターの松田恵美氏、同大学健康管理センター・精神医学講座の山室和彦氏らによるもので、詳細は7月30日付の「PCN Reports」に掲載された。せん妄は、入院中の合併症で、短期間に注意力や意識、認知機能の障害が生じ、高齢者や身体的に弱い患者に多い。入院期間延長や死亡リスクの上昇と関連し、患者の発症しやすさに、手術、感染症、薬剤などが重なって発症すると考えられる。実臨床では見逃される例もあり、全入院患者を対象に、院内スクリーニング項目と紹介後のせん妄診断との関連を検討したデータは限られていた。著者らは、入院患者のリスク因子の分布と、専門チームの診断に関連する因子を検討した。研究では、2022年6月~2023年11月に奈良県立医科大学附属病院に入院した全ての連続患者2万980人を対象とし、除外基準は設けなかった。入院後3日以内に、厚生労働省の診療報酬制度に基づく院内チェックリストを用いて、年齢、認知症、せん妄既往、大量飲酒、薬剤使用、手術歴などを評価した。せん妄が疑われた場合は、主治医が認知症ケアチームまたは精神科に紹介し、専門チームがICD-10およびDSM-5-TRに基づき診断した。さらに、ロジスティック回帰分析により、関連因子を年齢と性別で調整して検討した。対象2万980人のうち、認知症ケアチームまたは精神科へのコンサルテーションは509人(2.4%)に行われ、209人(全対象の1.0%)がせん妄と診断された。この1.0%は、紹介後にせん妄と診断された患者の割合を示す。入院時のスクリーニングでは、1万1,823人(56.4%)が70歳以上に該当した。また、4,446人(21.2%)はいずれのリスク因子にも該当しなかった。年齢別にみると、この診断の割合は概ね年齢が高い群ほど高く、40歳未満では0%だったのに対し、80歳超では1.57%となった。また、認知症やせん妄既往歴は高齢群ほど多くみられた。一方、大量飲酒は中年層で多く、最も高齢の層では少なかった。未調整ロジスティック回帰分析では、年齢が1歳高くなるごとに、せん妄と診断されるオッズが3.2%高く、オッズ比(OR)は1.032(95%信頼区間〔CI〕1.020~1.043)だった。一方、年齢と性別を調整した多変量解析では、認知症(OR 3.995、95%CI 2.647~6.029)、せん妄既往歴(OR 3.649、95%CI 2.158~6.170)、大量飲酒(OR 1.648、95%CI 1.002~2.710)が、せん妄診断と独立して関連していた。一方、70歳以上、器質性脳疾患、せん妄リスクを高める薬剤の使用、全身麻酔下の手術などは、せん妄診断と独立して関連しなかった。著者らは、今回、認知症やせん妄既往などに着目し、早期にリスクを見極めて予防につなげる意義を指摘する。ただし、本研究で把握したのは、認知症ケアチームまたは精神科への紹介後に診断されたせん妄に限られる。紹介されず主治医が対応した症例や見逃し例は含まれないため、結果は入院患者全体のせん妄発症因子ではなく、紹介後の診断に関連する因子として解釈する必要がある。(HealthDay News 2026年9月7日) Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pcn5.70385 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock