手術の開始時刻は、手術の成績に影響するのだろうか。今回、手術開始時刻が手術時間に影響する可能性を示す研究結果が報告された。主要な泌尿器科手術2,627例を後ろ向きに解析したところ、午前に開始した手術は午後に開始した手術より時間が長かった一方、周術期合併症や全生存期間には差が認められなかった。研究は、広島大学腎泌尿器科学の小畠浩平氏、日向信之氏らによるもので、詳細は8月8日付の「World Journal of Urology」に掲載された。手術開始時刻が手術の効率や患者の転帰に影響する可能性が指摘されている。これまで、遅い時間帯の手術で合併症や死亡、入院期間などのリスクが高まるとの報告がある一方、手術時間や周術期成績に明らかな差はないとする研究もあり、結果は一貫していない。泌尿器科手術におけるエビデンスも限られている。このような背景から著者らは手術開始時刻と主要な泌尿器科手術の臨床転帰との関連を検討した。著者らは、広島大学病院で主要な泌尿器科手術を受けた2,627例を対象に後ろ向き解析を実施した。手術開始時刻により、8~12時の「午前群」と12時以降の「午後群」に分類。手術時間、出血量、周術期合併症、全生存期間(OS)などを比較した。傾向スコアマッチング(PSM)で年齢、性別、BMI、併存疾患、腫瘍関連因子、術式、手術アプローチ、術者経験などの患者背景を調整し、手術開始時刻と手術時間の関連を線形回帰分析でも検討した。PSM前は、午前群で高齢者や併存疾患のある患者が多く、手術時間や出血量が多かった。悪性疾患ではOSも午前群で不良だった。PSM後は各群954例となり、患者背景をそろえると、出血量、周術期合併症、OSに差は認められなかった。手術時間については午前群で長く(P=0.001)、手術室への入室時刻が1時間遅くなるごとに、手術時間は2.5分短縮した(P<0.001)。午前・午後早期(12~15時)・午後遅期(15時以降)の3群で比較しても、手術時間は有意に異なった(P=0.003)。一方、午後早期と午後遅期の間には有意差はなかった。著者らは、主要な泌尿器科手術では、手術開始時刻が午後になるほど手術時間が短くなる一方、周術期合併症やOSには影響しなかったと結論づけた。手術時間の差は臨床的には小さく、手術開始時刻が臨床転帰に及ぼす影響は限定的と考察している。手術時間が午前群で長かった理由については、午前中は時間的な制約が少ないことや、1日の手術を重ねるにつれて術者・チームが“ウォーミングアップ”し、手術が効率化する可能性を指摘。また、午後遅くなるほど手術時間が延びる傾向はみられなかったことから、時間経過に伴う術者の疲労が手術時間を延ばした主な要因とは考えにくく、午前の手術環境や時間的な余裕、症例の割り当てなどが影響した可能性があるとみている。なお、本研究の限界点として、後ろ向きの単施設研究で因果関係を判断できないこと、手術チームの構成や研修医の参加、症例の複雑さなどを十分に把握できていないことを挙げている。(HealthDay News 2026年9月14日) Abstract/Full Texthttps://link.springer.com/article/10.1007/s00345-026-06614-8 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock