第2世代抗精神病薬(SGA)の副作用の一つとして低Na(ナトリウム)血症が知られている。今回、米国の副作用報告データベースで、個々のSGAと低Na血症の報告との関係を調べ、その結果を日本の大規模な医療データベースで検証したところ、アリピプラゾールを使用した患者では、オランザピンを使用した患者と比べて低Na血症リスクが48%低いことが分かった。研究は藤田医科大学薬物治療情報学の波多野正和氏らによるもので、詳細は8月13日付の「JAMA Network Open」に掲載された。抗精神病薬に関連する低Na血症は患者の3~6%に生じるとされ、軽度であっても入院期間の延長や再入院、死亡と関連することが報告されている。SGAは第1世代抗精神病薬と比べて低Na血症リスクが低い可能性が示されているものの、SGAの薬剤間でリスクにどの程度の違いがあるかは明らかになっていない。このような背景から、著者らは、米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)を用いて個々のSGAと低Na血症との関連を探索するとともに、日本の大規模なレセプトデータベースを用いてSGA間の低Na血症リスクを検討した。研究は2段階で行われ、まずFAERSのデータを用いて、個々のSGAと低Na血症との関連を探索した。そこで得られた結果を検証するため、日本の515病院・約4,800万人のデータを収載するメディカル・データ・ビジョン社の医療データベースから、抗精神病薬を新たに処方された18~69歳の患者を抽出し、使用開始後180日以内の低Na血症発症リスクを比較した。オランザピンはFAERSで低Na血症の報告数が最も多く、臨床でも広く使用されていることから基準薬とした。患者背景は傾向スコアに基づく重み付けで調整した。低Na血症は、血清Na値が135 mEq/L未満、または抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などの診断が記録された場合と定義した。解析の結果、アリピプラゾール、アセナピン、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドンの7剤で、オランザピンより低Na血症の報告が少ないシグナルが認められた。特に、ブレクスピプラゾール(報告オッズ比〔ROR〕0.13、95%信頼区間〔CI〕0.08~0.19)とルラシドン(同0.19、0.14~0.24)のRORが低かった。日本の医療データベースでは、抗精神病薬を処方された96万1,010人のうち、条件を満たした5万5,394人を解析した。アセナピン、ルラシドン、パリペリドンは対象患者が1,000人未満だったため、コホート解析から除外された。解析対象者の平均年齢は50.4歳で、低Na血症は366人(0.7%)に発症した。患者背景を調整した解析では、アリピプラゾールはオランザピンと比べて低Na血症リスクが48%低かった(調整ハザード比0.52、95%CI 0.35~0.76)。一方、ブレクスピプラゾールでは調整後に有意差がなくなり、その他の薬剤でもオランザピンとの有意差は認められなかった。感度分析でも主要な結果は概ね一貫していた。著者らは、SGAでは低Na血症リスクに薬剤間差がある可能性があり、特にアリピプラゾールはオランザピンと比べて低Na血症リスクが低いことが、複数の解析で示されたと考察。低Na血症のリスクが高い患者では、抗精神病薬の選択に役立つ可能性があるとしている。一方、残余交絡やアウトカムの把握方法の違いなどの影響を否定できず、個々の抗精神病薬と低Na血症との関連を明らかにするには、さらなる研究が必要だとしている。(HealthDay News 2026年9月18日) Abstract/Full Texthttps://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2852735 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock