人生で起こる出来事を理解し、困難に対処でき、そこに意味を見いだせるという感覚は、「首尾一貫感覚(SOC)」と呼ばれる。今回、高齢者におけるSOCの低さが、その後に重度の要介護状態となることや、死亡することと関連していたとする研究結果が報告された。研究は、京都大学大学院医学研究科医療疫学分野の松下翔氏、同研究科地域医療システム学講座の山崎大氏、同研究科医療疫学分野の山本洋介氏らによるもので、詳細は8月31日付で「PLOS ONE」に掲載された。高齢者は、慢性疾患や身体機能の低下など、さまざまな健康上の問題に直面する。こうした逆境に適応し、健康を維持するためには、身体的な状態だけでなく、心理的な側面も重要と考えられている。SOCが高い人は、利用できる資源を活用しながらストレスや健康上の問題に対処しやすいと考えられており、死亡や身体機能低下、心血管疾患の発症などとの関連も報告されている。ただし、SOCと重度の要介護状態または死亡との関連は十分に検討されていなかった。このような背景から、研究グループは、高齢者におけるSOCと、その後の重度の要介護状態または死亡との関連を検討した。研究グループは、福島県南会津町と只見町で実施された地域ベースの前向きコホート研究「LOHAS」のデータを二次解析した。2008年にベースライン調査を受けた65歳以上の地域在住高齢者のうち、要介護認定を受けておらず、SOCを測定した2,127人を対象とした。SOCは、3項目からなる日本語版のSOC尺度を用いて評価し、各項目を7段階で採点した合計3~21点のスコアとして算出した。主要評価項目は、要介護3~5の認定または死亡の複合アウトカムとした。追跡期間中の要介護認定や死亡に関する情報を自治体の行政記録などから収集し、共変量として年齢、性別、BMI、就労状況、独居の有無、併存疾患数、飲酒、喫煙、精神的健康状態、身体活動量を調整して、SOCとの関連を解析した。共変量に欠測のない1,661人を対象とした主解析では、追跡期間中央値5.8年の間に、128人(7.7%)が要介護3~5の認定を受けるか、死亡した。このうち、要介護3~5の認定を受けた人は54人(3.3%)、要介護3~5の認定を受けずに死亡した人は74人(4.5%)だった。SOCが1標準偏差低いごとに、共変量を調整した要介護3~5の認定または死亡のハザード比は1.25(95%信頼区間〔CI〕1.07~1.46、P=0.005)であった。死亡のみをアウトカムとした場合も、SOCが1標準偏差低いごとに調整ハザード比は1.24(95%CI 1.03~1.50、P=0.022)であった。死因ではがんが最も多く、次いで心血管疾患だった。SOCが1標準偏差低いごとに、心血管疾患死亡の調整ハザード比は1.61(95%CI 1.16~2.23、P=0.005)だった。一方、がん死亡との関連は統計学的に有意ではなかった。著者らは、SOCが高い人では、予防行動や治療への取り組み、ストレスへの対処などが適切に行われやすいことが、要介護状態や死亡との関連の一因となっている可能性を考察している。また、SOCは高齢者でも介入によって改善できる可能性があるとし、SOCを高めることで重度の要介護状態を防げるかどうかを検討するさらなる研究が必要としている。一方、今回の研究には限界もある。著者らは、要介護状態に至った正確な原因を把握していなかったこと、社会経済的要因など一部の交絡因子を測定していなかったこと、対象地域が福島県内の南会津町と只見町の2地域に限られていたこと、SOCをベースライン時の1回しか測定しておらず、追跡期間中の変化を評価できなかったことなどを挙げている。(HealthDay News 2026年10月19日) Abstract/Full Texthttps://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0355726 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock