認知症予防に関する研究成果を広く社会に届け、実際の活動につなげるには、参加しやすい機会や方法を用意することが重要かもしれない。今回、鳥取県の高齢者9,506人を対象とした調査で、認知症予防プログラムの認知度は11.9%にとどまった一方、指導者が派遣されれば約半数がプログラムを体験したいと回答し、1回約10分の活動にも約半数が取り組みたいと回答した。この調査は、鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座の河月稔氏らが実施したもので、詳細は8月31日付で「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。認知機能低下の予防には、運動や知的活動、生活習慣に着目した多因子介入が有効とされている。著者らは2017年、身体運動、知的活動、認知症や生活習慣に関する教育を組み合わせた「とっとり方式認知症予防(TMDP)プログラム」を開発し、参加による認知機能と身体機能の改善を報告している。同プログラムは2019年度から講演会やテレビ、新聞、県のウェブサイトなどを通じて普及されてきた。一方、研究で効果が確認された介入を実社会に広めるには課題もあり、限られた人的資源で地域住民の継続的な活動を支援する方法も明らかになっていなかった。そこで著者らは、質問票を用いて、認知症予防活動の提供方法に対する需要と参加者の特徴との関連を調べ、継続的な参加を支える方法を検討した。研究グループは2024年9~10月、鳥取県の老人クラブ会員を対象に横断的な質問票調査を実施した。1万63人から回答を得て、アンケート用紙の同意確認欄にチェックがなかった557人を除外し、9,506人を解析対象とした。質問票では、年齢や性別、フレイル(加齢に伴って心身の活力が低下した状態)、主観的認知機能低下(SCD)のほか、認知症予防活動への取り組み状況、自宅のインターネット環境、オンラインツールの利用経験などを尋ねた。また、TMDPプログラムの認知度、指導者が派遣された場合の体験への関心、インターネットの活用や印刷物の配布による活動への参加意向についても調査した。TMDPプログラムを知らない人でも回答できるよう、質問票にはプログラムの概要と過去に報告された効果を記載した。さらに、TMDPプログラムへの関心と参加者の特徴との関連をロジスティック回帰分析で検討した。解析対象となった9,506人のうち、プレフレイルまたはフレイルに該当した人は81.4%、SCDがみられた人は33.1%だった。TMDPプログラムを知っていた人は11.9%にとどまった。一方、指導者が派遣されるならプログラムを体験してみたいと回答した人は50.4%に上った。オンラインで提供した場合に、クラブの集まりで取り組みたいと回答した人は36.4%、自宅で取り組みたいと回答した人は36.3%だった。印刷物の配布があった場合に、クラブの集まりで定期的に取り組みたいという人は46.1%、1回10分程度であれば取り組みたいという人は50.5%に上昇した。また、フレイルであることは、印刷物提供による1回約10分の短縮版プログラムへの関心の低さと関連しており、調整オッズ比(aOR)は0.77(95%信頼区間0.67~0.89)だった。SCDがあることについても同様の関連がみられ、aORは0.86(同0.79~0.95)だった。著者らは、認知症予防に関する研究成果を一般の人に広めることは容易ではないと指摘。その上で、活動への継続的な参加を促すには、実際にプログラムを体験できる機会や、短時間で取り組める活動を提供することが重要だとしている。また、フレイルやSCDがある人など、健康上のリスクが高い人ほど予防活動への関心が低かったことから、広く情報を発信するだけでなく、対象者の特徴に応じた積極的な働きかけも必要としている。なお、実際にプログラムを提供した研究ではないため、参加意向が実際の継続参加につながるかどうかは明らかでない。また、普及方法が厳密に規定されていなかったことや、地域によって結果が異なる可能性も限界として挙げられている。(HealthDay News 2026年10月19日) Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.70820 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock