緑内障は初期には自覚症状が乏しく、進行する疾患であるため、早期発見・治療には眼科受診につなげるための啓発が重要となる。こうした中、日本人の緑内障に対する認知度には地域差があり、特に女性では、仙台市・富谷市の調査回答者で、その他46都道府県の回答者より認知度が高いことが、オンライン調査で明らかになった。また、眼科受診行動には、緑内障に関する知識や理解に加え、緑内障への懸念や恐怖なども関連していた。研究は、東北大学医学部眼科学教室の檜森紀子氏、中澤徹氏らによるもので、詳細は9月3日付の「Japanese Journal of Ophthalmology」に掲載された。緑内障は、世界および日本で失明の主要な原因疾患となっている。2004年の多治見スタディでは、緑内障患者の大半が自身の疾患を認識しておらず、2022年の久山町研究でも未診断例が高頻度に認められている。近年は、日本緑内障学会による「ライトアップ in グリーン運動」などの啓発活動も行われているが、一般の人が緑内障をどの程度認知しているのか、また地域や性別によって知識や眼科医療への意識に違いがあるのかは明らかになっていない。このような背景から、研究グループは、日本人の緑内障に対する認知度の現状を調べ、地域や性別による違いを検討した。研究は、インターネット調査会社の登録者を対象とした横断研究として行った。調査期間は2024年10月31日~11月10日で、30~69歳の日本人男女1,600人を対象とした。対象者を、継続的な緑内障啓発活動が行われている宮城県仙台市・富谷市と、その他46都道府県の2地域に分けて比較し、年齢と性別で層別化した。緑内障に関する認知・知識や眼科受診・検査への意識などを尋ね、認知度は5段階で評価した。さらに、性別、年齢、居住地域、緑内障への理解や恐怖、運転習慣などと、眼科受診の有用性に対する認識や受診・検査の意向など、4項目との関連をパス解析で調べた。緑内障に対する認知度は、仙台市・富谷市の調査参加者で、その他46都道府県の調査参加者より有意に高かった(P=0.01)。性別に層別化して地域差を検討すると、女性では仙台市・富谷市の調査参加者で認知度が有意に高かった(P=0.03)が、男性では有意な地域差は認められなかった(P=0.18)。ただし、地域による認知度の差は小さかった(Cohen's d=0.13)。なお、本研究は横断研究であり、地域で行われている啓発活動が認知度の差をもたらしたかどうかを直接検証したものではない。パス解析では、「目の機能低下の予防に眼科受診が役立つという認識」は、女性であること、緑内障に対する恐怖、認知度と有意に関連していた。また、「症状がない段階で眼科を受診する意向」は、緑内障に対する認知度や理解と有意に関連していた。さらに、「有料の眼科検査を受ける意向」は、女性であること、運転に関連する困難、緑内障への恐怖や理解と有意に関連していた。「目に不快感がある場合の眼科受診の意向」は、女性であること、年齢が高いこと、緑内障に対する恐怖や認知度と有意に関連していた(いずれもP<0.05)。研究グループは、緑内障の早期発見に向けた啓発では、病気に関する正確な知識を伝えることに加え、緑内障への懸念や恐怖といった心理的な側面へのアプローチも考慮することが有用であると考察している。また、今回観察された地域や性別による違いを踏まえ、対象に応じた啓発方法を検討する必要性が示唆されたとしている。特に、症状のない人では知識や理解を深める教育的なアプローチが、症状がある人では感情面にも配慮したアプローチが、それぞれ眼科受診を促す上で有用となる可能性があるとしている。また、研究グループは、緑内障をはじめとする眼疾患への関心を高め、眼科受診につなげるための新たな啓発活動(目磨き文化の推進)も進めている。「わくわく」をテーマに、ゲーミフィケーションや映像、建築などを取り入れた新たな眼科啓発にも取り組んでいる。市民が楽しみながら目の健康について学び、眼科受診につなげる「未来の診療所」の実現を目指している。(HealthDay News 2026年10月26日) Abstract/Full Texthttps://link.springer.com/article/10.1007/s10384-026-01406-4 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock