処方された薬が飲み切れずに残る「残薬」は、服薬アドヒアランスに関連する課題の一つだ。今回、残薬の発生に関連する要因は年齢によって異なり、若年層では長期処方、高齢者では処方薬数の多さや複数診療科の受診との関連が強いことが示された。地域薬局でプロトコールに基づく薬物療法管理(PBPM)により収集された、外来患者3万6,340人のデータを解析した研究で明らかになった。研究は、ひたちなか総合病院薬務科の平井利幸氏(日本大学薬学部客員研究員)、日本大学薬学部の花岡峻輔氏らによるもので、詳細は9月4日付の「Journal of Pharmacy & Pharmaceutical Sciences」に掲載された。残薬は、服薬アドヒアランスに関連する問題を把握する上で重要な指標であり、医療資源の浪費につながる課題である。こうした中、薬局では残薬を確認して必要に応じて処方を調整することが求められている。著者らの施設では2016年から、地域薬局の薬剤師がPBPMに基づいて残薬を確認し、処方日数を調整する取り組みを行ってきた。しかし、残薬の発生に関連する要因が年代によってどう異なるかは明らかでなかった。そこで本研究では、PBPMに基づく残薬調整の報告データを用いて、年代別に残薬の発生と処方関連因子との関連を検討した。研究は、ひたちなか総合病院を受診した外来患者を対象とする単一施設の後ろ向き観察コホート研究として実施された。2016年4月~2021年3月に経口薬を処方された3万6,340人を解析し、注射薬や外用薬のみ、または頓用薬のみの患者は除外した。地域薬局の薬剤師が残薬を確認し、残薬調整プロトコールに基づいて処方医に報告した。残薬の有無と年齢、性別、処方薬数、処方日数、診療科数との関連を、多変量ロジスティック回帰分析で検討し、年齢との交互作用も評価した。解析対象3万6,340人のうち、残薬が報告されたのは3,472人(9.6%)だった。残薬あり群は、残薬なし群に比べて年齢が高く、処方薬数と診療科数が多く、処方日数も長かった。残薬が確認された割合は年齢とともに上昇し、80歳代で15.9%と最も高かった。また、残薬あり群のうち複数回の残薬報告があった患者は53.7%で、40歳以上では半数を超えた。多変量解析では、処方薬数、処方日数、診療科数と残薬との関連に年齢による違いが認められた。5剤未満の処方は、すべての年齢層で残薬が確認される確率が低いことと一貫して関連していた。20歳代と30歳代では60日以上の長期処方との関連が特に強く、20歳代の調整オッズ比(AOR)は102.15(95%信頼区間24.08~433.26)、30歳代では79.80(同24.54~259.51)だった。複数診療科の受診も残薬と関連し、10歳代(7.18〔2.84~18.11〕)と80歳代(3.24〔2.60~4.02〕)で特に強い関連を示した。また、複数の要因が重なると、残薬が確認される確率がさらに高くなった。著者らは、残薬は服薬アドヒアランス不良だけでなく、用量変更や治療中止などでも生じる多因子的な指標だと指摘する。残薬に関連する要因は年齢によって異なり、若年者では長期処方、高齢者では多剤処方や複数診療科の受診との関連が強かった。残薬対策では、薬剤数の適正化を基本に、年齢に応じた処方・連携体制の調整が重要だとしている。研究は単一施設の後ろ向き解析であり、残薬が薬剤師に申告されなかったケースや、生活状況、認知機能などの未測定因子は評価されていない。また、残薬は服薬アドヒアランス不良以外の要因でも生じるため、各因子と残薬との因果関係は判断できない。特に若年層では残薬が確認された患者数が少なく、AORの95%信頼区間も広いため、関連の大きさは慎重に解釈する必要がある。(HealthDay News 2026年10月26日) Abstract/Full Texthttps://www.frontierspartnerships.org/journals/journal-of-pharmacy-pharmaceutical-sciences/articles/10.3389/jpps.2026.16879/full Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock