慢性腎臓病(CKD)では塩分制限が血圧や蛋白尿を低下させるなど、腎保護作用が期待されている。今回、75歳以上のCKD患者を対象とした単施設の後ろ向きコホート研究で、塩分摂取量と腎アウトカムとの関連を調べた。塩分摂取量が多いことはCKDステージ3では腎アウトカムのリスク上昇と関連した一方、ステージ4~5では有意な関連は認められなかった。この結果は、高齢CKD患者では、CKDが進行する前から塩分管理を行うことの重要性を示唆している。研究は、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科の宮内宏彰氏、畔上達彦氏らによるもので、詳細は9月17日付の「Nephrology」に掲載された。CKDは高齢者に多く、日本では75歳以上の約3人に1人が該当すると推定されている。塩分制限は血圧や蛋白尿を低下させるなど、腎保護作用が期待される非薬物療法の一つだが、腎機能への効果には議論がある。特に高齢者ではエビデンスが限られるほか、過度な塩分制限は栄養不足やフレイル、サルコペニアにつながる可能性もある。また、塩分制限の効果はCKDの進行度によって異なる可能性がある。このような背景から、研究チームは75歳以上のCKD患者を対象に、CKDステージ別に塩分摂取量と腎アウトカムとの関連を調べた。本研究は、単施設後ろ向きコホート研究として実施された。対象は、2017~2024年に同院を受診した75歳以上のCKD患者のうち、eGFR 60 mL/min/1.73 m2未満の患者とした。透析・腎移植歴、急性腎障害などのある患者は除外した。随時尿(スポット尿)から田中式を用いて24時間尿中ナトリウム排泄量を推定し、6カ月以内に2回測定した値の平均を塩分摂取量とした。CKDステージ3(eGFR 30~59 mL/min/1.73 m2)とステージ4~5(eGFR 30 mL/min/1.73 m2未満)に分け、塩分摂取量を4群に分類して腎アウトカムとの関連を解析した。主要評価項目はeGFRの30%以上の低下または腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)の開始とし、年齢、性別、eGFR、蛋白尿、栄養状態、糖尿病、収縮期血圧、利尿薬使用などを調整した。対象は462人で、年齢中央値は79歳、男性が68.6%を占めた。CKDステージ3が305人(66.0%)、ステージ4~5が157人(34.0%)で、追跡期間中央値は2.79年だった。追跡期間中に121人(26.2%)で、eGFRの30%以上の低下または腎代替療法の開始が認められた。全体では、塩分摂取量と腎アウトカムとの有意な関連は認められなかった。一方、CKDステージ3では、塩分摂取量が最も多い群は、最も少ない群と比べて腎アウトカムのリスクが2.70倍となった(調整ハザード比2.70、95%信頼区間1.02~7.12)。ステージ4~5では有意な関連は認められなかった。塩分摂取量とCKDステージの間には有意な交互作用が認められ(P=0.049)、感度分析でもステージ3では同様の傾向が確認された。著者らは、75歳以上のCKD患者では、塩分摂取量と腎アウトカムとの関連がCKDステージによって異なると結論付けている。ステージ3では塩分摂取量が多いほど腎アウトカムのリスクが高かった一方、ステージ4~5では明らかな関連は認められなかった。著者らは、ステージ3では塩分摂取による血圧や糸球体内圧への影響を受けやすい可能性がある一方、ステージ4~5では不可逆的な腎障害の進行により、塩分摂取の影響が相対的に小さくなった可能性があると考察している。この結果を踏まえ、CKDが高度に進行する前から、残存腎機能や栄養状態、フレイルなどを考慮した個別の塩分管理を行うことが重要だとしている。本研究の限界として、随時尿と予測式から塩分摂取量を推定しており、24時間蓄尿より精度が低い点、単施設の後ろ向き研究である点、栄養状態などの残余交絡を完全には排除できない点などが挙げられる。(HealthDay News 2026年11月2日) Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nep.70285 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock