「総合的な対策のパッケージ」で医師偏在対策を――「骨太の方針2024」

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政府は6月21日、中期的な重要政策をまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2024」(以下、「骨太の方針2024」)を閣議決定し、医療界で大きな課題となっている医師偏在対策について大枠と方向性を示した。また、医療・介護DXについては強力に推進するとした。

まず、医師偏在対策として、医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、2024年末までに「総合的な対策のパッケージ」を策定する。

その中心となるのは、▽医師確保計画の深化、▽必要な人材を確保するための取り組みとして、医師養成過程での地域枠の活用、大学病院からの医師の派遣、総合的な診療能力を有する医師の育成、リカレント教育の実施、▽規制的手法を組み合わせた取り組みとして、経済的インセンティブによる偏在是正、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大――などの施策だ。

この「総合的な対策のパッケージ」に含まれる個別の事項については、具体的な検討が始まっているものもある。例えばリカレント教育の基本的な意味は「社会人の学び直し」だが、これについて厚生労働省(以下、厚労省)の「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」で、かかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育・研修の観点から検討が始められている。

また、厚労省は7月3日、およそ5年ぶりに第20回「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」を開き、医師偏在対策の観点から地域医療支援病院の機能や管理者要件などについて検討を始める。

政策として単純ではないのが、経済的インセンティブによる偏在是正だ。これに関しては、すでに財務省の財政制度等審議会が5月21日、いわゆる「春の建議」で、医師の地域間の偏在対策として、診療所過剰地域で1点当たり単価を引き下げる地域別診療報酬を活用したインセンティブ措置を検討する必要がある、と提案している。しかし、それには医療界で強い反発があり、政府レベルでどのような経済的インセンティブを打ち出せるのかが問われることになる。

医療DXと介護DXを合わせて強力に推進する

昨年までの骨太の方針では「医療DX」とされていたが、「骨太の方針2024」では「医療・介護DX」に変更され、介護分野のDXも視野に入れつつ政府を挙げて強力に推進する。背景には高齢者人口の増加、総人口の減少があり、具体的な取り組みとしては、ロボット・デジタル技術、ICT・オンライン診療の活用など、先端技術・データなどを徹底活用する。

医療・介護DXが可能となった大きな要因は、オンライン資格確認システムがすでに9割以上の保険医療機関・薬局に導入され、ネットワーク基盤が整備されたことだ。「骨太の方針2024」では、2025年度運用開始予定の「全国医療情報プラットフォーム」を構築するほか、電子カルテの導入や電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX、PHR(Personal Health Record:個人の健康状態、保健、医療、介護に関する履歴を一元的に集約したデータ)の整備・普及を強力に進める。また、調剤録等の薬局情報のDX・標準化の検討を進める、とした。(HealthDay News 2024年7月3日)

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