高額療養費制度の早急な見直しに向け、厚生労働省(以下、厚労省)は12月5日に開催された第188回「社会保障審議会医療保険部会」で、高額療養費の自己負担限度額引き上げによる保険料などへの影響についてモデル試算を提示した。引き上げ自体は合意されたが、外来特例の抜本的見直しについては意見が分かれた。現行の高額療養費制度において70歳未満の場合は、(1)住民税非課税、(2)年収約370万円まで、(3)年収約370~770万円、(4)年収約770~約1160万円、(5)年収約1160万円以上――と、5つの所得区分になっている。このうち、(3)(4)(5)の自己負担限度額は固定しておらず、一定額を超えた医療費の1%を自己負担限度額に加算するという趣旨の計算式を用いる。70歳以上の場合は、住民税非課税という大枠において2つの区分が設けられ、外来特例として、外来の自己負担限度額が月単位で8,000円、また、その上の所得区分においては、年収約370万円以上で同1万8,000円などとされている。厚労省が提示した機械的なモデル試算の考え方は、住民税非課税区分を除く(2)~(5)の所得区分については、それぞれ3つに分類した上で、自己負担限度額を全13区分に細分化。次に細分化後の各区分の自己負担限度額を一律に引き上げた場合の影響を、引き上げ率5%、7.5%、10%、12.5%、15%の5パターンで機械的に試算したものだ。 外来特例の廃止も含めた抜本的見直しには委員の意見が分かれるモデル試算での保険料の軽減効果は、自己負担限度額の引き上げ率5%の場合は2600億円、15%の場合は4300億円というように、引き上げ率が大きいほど保険料の軽減効果も大きくなる。加入者1人当たり保険料軽減額(年額)は、引き上げ率が5%の場合は600~3,500円、15%の場合は1,200~5,600円となる。軽減額に幅が生じているが、その額が最も小さいのは後期高齢者、最も大きいのは基本的に現役世代だ。委員からは、高額療養費の自己負担限度額の見直しが必要なことについては異論は出なかったが、外来特例については「70歳以上の外来特例は二重・三重のセーフティネットになっている感が否めない。その廃止を含む抜本的な見直しが必要である」との意見が出たのに対して、「在宅医療が外来特例に該当しやすいことなどを踏まえて外来特例の廃止の意見があるが、明確に反対したい」との反論もあった。なお今後、システム改修に要する期間なども含めて、どのようなスケジュールで見直しを施行するかの判断も重要となる。(HealthDay News 2024年12月18日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46486.htmlCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.カテゴリー:医療制度