ゲノム医療施策に関する基本計画の案(以下、基本計画案)について、厚生労働省(以下、厚労省)が3月25日に開催した第11回「ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ」(以下、ゲノム基本計画WG)で大筋合意がなされ、修文などを座長と事務局に一任した。今後、省庁間の調整なども行った上で、基本計画を策定する。ゲノム医療に関しては、2019年に「包括的がん遺伝子パネル検査」の保険適用が開始となり、これまでに約9万症例で実施されているほか、同年12月にスタートした厚労省による「全ゲノム解析等実行計画」に沿い、がん・難病を対象とする全ゲノム解析が2024年10月時点で約2万9,000症例において実施されるなど取り組みが進められてきた。このようにゲノム医療の社会実装が進行しているにもかかわらず、理念や方向性についての基本的な方針が明確ではなかった。そこで、2023年6月に「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」(ゲノム医療推進法)が成立し、同法第8条の規定に基づき、ゲノム医療施策に関する基本的な計画を策定することとなった。基本計画案は「理解と啓発」「提供体制の構築」「研究開発の推進」の3本柱ゲノム基本計画WGが大筋で合意した基本計画案は、全体目標として「個人の権利及び利益を尊重しながらゲノム医療を推進することで、国民の健康に寄与することを目指す。」を掲げ、(1)国民の適切な理解や倫理に関する啓発、(2)ゲノム医療等を提供するための体制構築、(3)ゲノム医療の実現に向けた研究開発の推進――の3つを柱とし、分野別で施策の方向性を示している。(1)国民の適切な理解や倫理に関する啓発については、ゲノム情報を理由とした不当な差別が主要な議論のテーマとなった。ゲノム情報に基づく就職や就労(人事評価など)、生命保険の引受け・支払い、結婚などにおける不当な差別などに関する事例が報告されていることを受け、基本計画案では、厚労省の「ゲノム情報による不当な差別等への対応の確保(労働分野における対応)」のQ&A、生命保険協会と日本損害保険協会による「遺伝情報による不当な差別等への対応の確保(保険分野における対応)」のQ&Aの内容について広く周知を図る、などとしている。また、不当な差別などがあった場合に対応できるよう相談窓口や救済制度などを整備し、広く周知することを個別目標とした。(2)ゲノム医療等を提供するための体制構築では、人材の確保が課題とされ、ゲノム情報を正しく解釈し用いるための多職種の医療従事者や遺伝カウンセリングに係る専門人材の確保を図る。(3)ゲノム医療の実現に向けた研究開発の推進では、ゲノム情報の利活用の主体として医療機関・研究機関とともに企業が明確に位置付けられた。また、継続的な研究開発のためには専門的な人材の確保・養成・資質の向上を課題とした。これに対し、経済界を代表する構成員から企業がゲノム情報の利活用の主体となったことを歓迎する発言が出た。(HealthDay News 2025年4月9日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_55846.htmlCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.カテゴリー:難病・希少疾患
ゲノム医療施策に関する基本計画の案(以下、基本計画案)について、厚生労働省(以下、厚労省)が3月25日に開催した第11回「ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ」(以下、ゲノム基本計画WG)で大筋合意がなされ、修文などを座長と事務局に一任した。今後、省庁間の調整なども行った上で、基本計画を策定する。ゲノム医療に関しては、2019年に「包括的がん遺伝子パネル検査」の保険適用が開始となり、これまでに約9万症例で実施されているほか、同年12月にスタートした厚労省による「全ゲノム解析等実行計画」に沿い、がん・難病を対象とする全ゲノム解析が2024年10月時点で約2万9,000症例において実施されるなど取り組みが進められてきた。このようにゲノム医療の社会実装が進行しているにもかかわらず、理念や方向性についての基本的な方針が明確ではなかった。そこで、2023年6月に「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」(ゲノム医療推進法)が成立し、同法第8条の規定に基づき、ゲノム医療施策に関する基本的な計画を策定することとなった。基本計画案は「理解と啓発」「提供体制の構築」「研究開発の推進」の3本柱ゲノム基本計画WGが大筋で合意した基本計画案は、全体目標として「個人の権利及び利益を尊重しながらゲノム医療を推進することで、国民の健康に寄与することを目指す。」を掲げ、(1)国民の適切な理解や倫理に関する啓発、(2)ゲノム医療等を提供するための体制構築、(3)ゲノム医療の実現に向けた研究開発の推進――の3つを柱とし、分野別で施策の方向性を示している。(1)国民の適切な理解や倫理に関する啓発については、ゲノム情報を理由とした不当な差別が主要な議論のテーマとなった。ゲノム情報に基づく就職や就労(人事評価など)、生命保険の引受け・支払い、結婚などにおける不当な差別などに関する事例が報告されていることを受け、基本計画案では、厚労省の「ゲノム情報による不当な差別等への対応の確保(労働分野における対応)」のQ&A、生命保険協会と日本損害保険協会による「遺伝情報による不当な差別等への対応の確保(保険分野における対応)」のQ&Aの内容について広く周知を図る、などとしている。また、不当な差別などがあった場合に対応できるよう相談窓口や救済制度などを整備し、広く周知することを個別目標とした。(2)ゲノム医療等を提供するための体制構築では、人材の確保が課題とされ、ゲノム情報を正しく解釈し用いるための多職種の医療従事者や遺伝カウンセリングに係る専門人材の確保を図る。(3)ゲノム医療の実現に向けた研究開発の推進では、ゲノム情報の利活用の主体として医療機関・研究機関とともに企業が明確に位置付けられた。また、継続的な研究開発のためには専門的な人材の確保・養成・資質の向上を課題とした。これに対し、経済界を代表する構成員から企業がゲノム情報の利活用の主体となったことを歓迎する発言が出た。(HealthDay News 2025年4月9日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_55846.htmlCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.カテゴリー:難病・希少疾患