厚生労働省(以下、厚労省)の中央社会保険医療協議会(以下、中医協)は4月23日、総会を開き、2026年度診療報酬改定に向けて議論を始めた。現下の経済情勢などを踏まえて、診療側委員は、物価・賃金の上昇に適時・適切に対応する仕組みの導入が必要であると訴えた。一方、支払側委員は、医療の効率化がこれまで以上に重要であると指摘した。中医協では通常、次期診療報酬改定に向けて、まず第1ラウンドの議論として、入院・外来などの主要な領域の現状と課題について意見を整理している。しかし、賃金・物価の上昇といった経済情勢、新たな地域医療構想の準備が始まろうとしていることなどから、2026年度診療報酬改定に向けては最初に、医療機関を取り巻く状況、医療提供体制について検討することとなった。そのスケジュールに基づき厚労省は、医療機関を取り巻く状況として、医療機関の経営の現状と課題などについて説明した。まず、診療側委員が、3月12日に公表された「日本医師会・6病院団体合同声明」で、(1)「高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という社会保障予算の目安対応の廃止、(2)診療報酬等について、賃金・物価の上昇に応じて適切に対応する新たな仕組みの導入――を求めていることを説明。その上で、2026年度診療報酬改定の最大の課題について「他産業に負けない賃上げを実現できるよう、医療機関の収支を改善させること」と発言した。さらに、収支改善に関して、これまでの診療報酬改定では点数の引き上げがあっても、さまざまな要件が付加されるため、それを算定するためにはより多くのコストが求められる、と指摘。「コスト増を前提とするのではなく、純粋な形で診療報酬を引き上げなければならない状況にあり、これを議論のスタートラインにすべきである」とした。支払側からは「医療の効率化がこれまで以上に重要」との指摘こうした診療側委員の意見に対し、支払側委員は「保険料の引き上げは限界に達している」とした上で、「今後は、医療DXの成果を本格的に活用することも含めて、医療の効率化がこれまで以上に重要」と指摘した。また、他の支払側委員からは、「医療機関の経営状況についての資料は損益計算、いわゆるフローとしてのものであることから、ストックの概念で内部留保の部分についても検討できる資料をいただきたい」との要望が出された。なお、今回の中医協総会では、「診療報酬改定結果検証部会」からの報告も行われ、「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査」の調査結果によると、現時点での後発医薬品の供給体制について84.1%の薬局が「支障を来たしている」と感じているなど、供給があまり改善していないことが明らかになった。(HealthDay News 2025年5月14日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57122.htmlCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.