がん医療は拠点病院の整備などによる「均てん化」に重点が置かれてきたが、2040年を見据え、厚生労働省(以下、厚労省)の「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」(以下、検討会)は6月23日、これまでの議論を整理し、高度な医療技術を伴うものは集約化するという方向性について合意した。 厚労省は検討会で、将来人口推計、過去5年平均のがん罹患率、将来の三大療法(手術・放射線・薬物)実施割合の線形予測などから、2025年を1.0とした場合の2040年の三大療法の需要について、手術療法は0.89に減少、放射線療法は1.38に増加、薬物療法は1.24に増加するという推計を示した。 供給の観点からは、手術療法については、構成比率の高い60歳以上の消化器外科医が、今後臨床現場を離れることが見込まれる。放射線療法に関しては、過疎地域、がん患者数が少ない地域などでは放射線治療装置の維持が困難になることが想定される。薬物療法については、薬物療法専門医ではない医師が中心となっているのが現状であり、消化器外科医数の動向などを考慮すると、薬物療法を提供できる医師の確保が重要になる。 都道府県レベル、がん医療圏レベルに分けて集約化を検討 こうした見通しや集約化によるメリットを踏まえて検討会では、今後の方向性として、高度な医療技術を伴うがん医療については提供する医療機関を集約化していくことに、異論は出なかった。 集約化のメリットとして、例えば手術件数の多い医療機関では術後合併症や術後死亡の発生率が低いといった報告があり、知見と経験を集積することで、安全な手術療法を提供できる。放射線療法、薬物療法についても、同様の傾向がある。 検討会で、厚労省では、集約化の検討が必要ながん医療/医療行為について、都道府県レベル、がん医療圏(二次医療圏)レベルに大きく分けた上で、具体例を表として示した。その例示の数としては手術療法が多く、例えば「食道がんに対する食道切除再建術」は都道府県レベルで、「胃がんに対する胃全摘術」はがん医療圏レベルで、それぞれ集約化を検討する。同様に、放射線療法は「専用治療病室を要する核医学治療」は都道府県レベル、「強度変調放射線治療や画像誘導放射線治療などの精度の高い放射線治療」はがん医療圏レベル、薬物療法については「特殊な二重特異性抗体治療などの高度な薬物療法」は都道府県レベル、「がんゲノム医療」はがん医療圏レベルに区分した。 その集約化に関して、患者団体を代表する構成員は、患者は医療機関へのアクセスに不安があるとして、アクセスの確保に配慮を求めた。また、がん医療を専門とする構成員は「これから、高齢者のがん医療が主流となる時代が訪れる」とした上で、「さまざまな合併症がある状態での新しい標準治療に向けての臨床研究が重要になってくる。これは、医療提供体制にもリンクしてくる」と指摘した。 なお、次回の検討会でがん医療提供体制の均てん化・集約化に関する報告書を取りまとめ、それを踏まえて厚労省が都道府県に通知を発出する予定である。(HealthDay News 2025年7月9日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59047.html Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved. カテゴリー:医療制度