厚生労働省(以下、厚労省)は7月31日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織である「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、分科会)で、医師の診療科偏在の是正、働き方・タスクシフト/シェアなどを取り上げた。委員からは、消化器外科医が減少していることを踏まえ、高難度の手術を集約化するとともに、外科医へのインセンティブの強化が必要などの意見が出された。 厚労省の調査報告によると、医師の診療科偏在に関しては、2008年を基準とした場合ほとんどの診療科で増加傾向にあるが、外科は横ばいである。さらに、外科系の診療科の医師数をみると、一般外科と消化器外科が一貫して減少している。また、2012年を基準とすると2020年には、40歳未満の若手の医師は8%増加しているが、若手の外科医に限ると7%減少している。 外科医が1名以上いる病院と医育機関(3,246施設)において、所属消化器外科医師(主たる診療科が外科、気管食道外科、消化器外科〔胃腸外科〕、肛門外科である週4日以上勤務の常勤医)が1人から2人の医療機関が48.7%でほぼ半数、消化器外科医師数が6人以上は21.6%、10人以上は9.1%だった。また、所属消化器外科医師が1人から2人の医療機関の多くは年間手術件数が100件未満で、3人から5人の医療機関であっても半数以上は年間手術件数が500件に満たないとの結果が明らかになった。 また、好事例として、広島大学病院で外科の診療体制を維持するために処遇改善に取り組んでいることなども報告された。これは、消化器外科などの若手診療医に対して2025年度から「未来の外科医療支援手当」として月額で10万円、年額で120万円を増額するというもので、27歳から40歳前後までの約30人が対象となっている。 分科会では、高度な手術を集約することで手術成績が向上すること、集約化によって1病院当たりの外科医数を増やすことにつながり、結果として業務分担ができ、ワークライフバランスや働き方改革にもつながることなども考慮。今後の方向性として、高難度手術については集約化が必要だという意見でほぼ一致した。また複数の委員から、広島大学病院の好事例などを踏まえ、外科医に対するインセンティブの強化、実効性のあるインセンティブが必要であるとの発言があった。 医師事務作業補助者の確保のため加算のあり方など検討を 医師の働き方改革として労働基準法に基づく時間外・休日労働の上限規制などが2024年4月から始まったが、分科会の2024年度「入院・外来医療等における実態調査」によると、現在(2024年11月1日時点)の勤務状況について「改善の必要性が高い」が10%、「改善の必要がある」が37%と、改善が必要だと回答した医師は47%と半数近くに上った。その理由としては、「医師の過重勤務により患者が不利益を被る可能性があるため」が53%、「業務を継続していけるか不安があるため」が49%、「ワークライフバランスがとれていないため」が47%となった。 医師の負担軽減のためには、医師事務作業補助者の配置が有効だが、2024年11月から12月にかけて実施した厚労省の医療専門職支援人材確保・定着支援事業のアンケート調査によると、医師事務作業補助体制加算を届け出ている医療機関の約40%が、医師事務作業補助者の必要数が確保できていないと回答している。 これを踏まえ、委員からは「医師事務作業補助体制加算のあり方を検討すべき」「基本的な処遇改善ができるように、入院基本料の見直しが優先される課題ではないか」といった意見が出された。 なお、分科会では、今回で主要な事項について一通りの検討を終えたため、検討結果の中間とりまとめを中医協・総会に報告する。(HealthDay News 2025年8月20日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00278.html Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved. カテゴリー:診療報酬、多職種連携