厚生労働省(以下、厚労省)は10月22日に開催された第5回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」で、▽高齢化の進展や医療の高度化等により増大する医療費への対応、▽年齢にかかわらない負担能力に応じた負担の実現、▽セーフティネット機能としての高額療養費制度の在り方――の3点を議題として提示した。 厚労省は検討材料として、高額療養費制度が適用された際の医療負担について、患者の年齢や年収、傷病・治療、総医療費、高額療養費制度の利用額、自己負担額などの詳細をまとめたモデルケースを複数提示した。例えば、40歳代の女性乳がん術後再発・転移患者(標準報酬月額15万円、年収約200万円未満)で分子標的薬療法を受けている場合、3割負担で年間197万4000円負担のところ、年に10回ほど高額療養費制度が適用され、自己負担額は年間44万7000円(22.6%)となった。また、家計支出のうち食費、光熱費、住居費、保険料以外の「その他」支出84万6000円に占める医療費自己負担の割合は52.8%であった。 このほか、健保組合における1カ月の医療費が1000万円以上の高額レセプトの件数の推移についても報告。2010年度は174件だった高額レセプト数は、2024年度には2,328件に上り、2010年度と比べ約13.4倍に達していた。また、高額レセプト上位100位平均の内訳をみると、2015年度は月額約1987万円(最高金額:約4253万円)だったのに対し、2024年度は月額約4250万円(同:約1億6871万円)に増大していた。 こうしたデータを踏まえ、委員からはまず、増大する医療費への対応について「低所得や長期療養の方への配慮はしつつ、自己負担の見直しは避けられない」との声が上がった。次に、負担能力に応じた負担の実現については「年齢にかかわらず、負担能力がある方には公平に負担していただく」との意見でおおむね一致し、「負担能力に応じた負担の実現には高齢者の外来特例は見直しが必要」との付言もあった。 なお、セーフティネット機能については「モデルケースをみると、WHOの定める破滅的医療費負担(医療費支出が支払い能力の40%を超える場合)に現行制度でも該当している。こうした患者が存在することに配慮して制度設計を行うべき」「国民医療費が48兆円規模で高額療養費が3兆円規模なので、高額療養費の見直しだけで国民医療費全体を是正するのは無理がある」など、自己負担額引き上げに対し疑問を呈する意見が出された。(HealthDay News 2025年11月5日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65037.html Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved. カテゴリー:医療制度