2026年度診療報酬改定に向けて、10月29日に開催した中央社会保険医療協議会(中医協)総会では医療機関を取り巻く状況について3回目の議論を行い、医療法人の病院や医科診療所で赤字施設の割合が2023年度から2024年度にかけて増加しているなど、経営状況が悪化していることが厚生労働省(以下、厚労省)から報告された。 公表された数値は、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)のデータを集計したもの。まず、2024年度決算(2025年7月末でMCDBに収集されているデータ)では、病院全体(1,515施設)における医業利益率は平均で-1.1%、うち一般病院は-1.3%、療養型病院は0.5%、精神科病院は-2.0%。それを機能大分類別でみると、回復期を除いて、高度急性期、急性期、慢性期、精神、その他全てにおいてマイナスとなっている。 2023年度・2024年度の両年度のデータがあって比較が可能な病院全体(848施設)の医業利益率(平均)、経常利益率(同)は、それぞれ、2023年度が-0.2%、2.0%、2024年度が-0.9%、0.3%となるなど、2024年度にかけて低下している。医業利益が赤字の病院全体の割合は2023年度が53.2%、2024年度が58.3%となり、2期にわたり過半数の病院が赤字で、その割合も拡大している。 それについて一般病院、療養型病院、精神科病院の類型別でみても、いずれも赤字割合が拡大している。また、いずれの類型においても材料費や給与費などの費用が増加し、赤字の要因となっている。 医科診療所全体(7,146施設)についても2023年度・2024年度の両年度で比較すると、医業利益率(平均)は2023年度7.3%から2024年度4.2%に、経常利益率(同)は9.2%から5.6%に、それぞれ低下している。医業利益が赤字の施設の割合も、31.3%から43.4%へと拡大している。 二次医療圏の人口に基づき、医科診療所について大都市型、地方都市型、人口少数地域型に分類した上で、2023年度・2024年度の両年度の医業利益の赤字割合をみると、大都市型は2023年度28.0%から2024年度39.4%、地方都市型は32.1%から44.3%、人口少数地域型は37.0%から50.9%へと推移し、特に人口少数地域型の経営環境が厳しいものとなっている。 国民の命と健康を守り、地域医療を支えるために診療報酬上の評価を それらの経営状況を踏まえて、診療側の委員は「国民の命と健康を守り、地域医療を支えるためには、物価高騰・賃金上昇に見合った診療報酬上の高い評価を強力に推し進め、実現するしか選択肢はない」と主張した。 一方、支払側の委員からは「医療機関の経営状況が悪化していることは事実として受け止めている」とした上で、「地域の医療ニーズに合った医療機関、経営努力で高い利益率を確保している医療機関もあり、補助金や税制も活用し、医療機関の分化・連携、再編・統合により最適な医療提供体制を実現する中で、基盤を安定させることや、経営マネジメントを強化する視点も重要」との発言が出た。 なお、医療従事者の人材確保や賃上げを目的として、2024年度診療報酬改定でベースアップ評価料を新設したが、2024年度の賃金改善計画書と賃金改善実績報告書の両方を提出した全医療機関(2万6,926施設)における2023年度時点と比較した2024年度の賃金増率は、加重平均で計画値2.70%に対し実績値2.93%と上回っていたものの、2025年度の賃上げは厳しい状況にあると推測されている。(HealthDay News 2025年11月12日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65351.html Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved. カテゴリー:診療報酬