政府は11月28日、2025年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の歳出は総額18兆3034億円。そのうち、厚生労働省(以下、厚労省)補正予算案(2兆3252億円)の中心をなすのは「医療・介護等支援パッケージ」で、1兆3649億円を計上。賃上げ・物価上昇に対応するため、基礎的支援として、病院に1床当たり19.5万円を交付するなど、病院への重点的な支援が盛り込まれた。 今回の「医療・介護等支援パッケージ」は、政府が11月21日に閣議決定した「『強い経済』を実現する総合経済対策〜日本と日本人の底力で不安を希望に変える〜」(以下、総合経済対策)で打ち出されたもので、2025年度補正予算が財源の裏付けとなる。 「医療・介護等支援パッケージ」は、医療分野が1兆368億円、介護分野と障害福祉分野で3281億円。医療分野の中心となっているのが「医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援」で、5341億円(賃上げ分1536億円、物価上昇分3805億円)が計上されている。これは2026年度診療報酬改定までの半年間、医療従事者に対する3%の賃上げに相当する措置となり、医療界からは高く評価されている。その主な支援は次の通りである。 病院に対しては、基礎的支援として1床当たり19.5万円(賃金分8.4万円、物価分11.1万円)。救急に対応する病院には、救急車受け入れ件数に応じて1施設当たり500万円(救急車受け入れ件数1件以上1,000件未満)から2億円(同7,000件以上)までの加算を行う。 有床診療所に対しては、1床当たり8.5万円(賃金分7.2万円、物価分1.3万円)。医科無床診療所・歯科診療所に対しては、1施設当たり32.0万円(賃金分15.0万円、物価分17.0万円)の加算となる。 それら以外に「医療・介護等支援パッケージ」においては、▽病床数の適正化に対する支援(3490億円)、▽施設整備の促進に対する支援(462億円)、▽生産性向上に対する支援(200億円)、▽出生数・患者数の減少等を踏まえた産科・小児科への支援(72億円)――などがあり、地域医療構想を推進するとともに、業務の効率化、職場環境の改善を行う。 また「医療・介護等支援パッケージ」では、独立行政法人福祉医療機構による優遇融資などを実施する(804億円)。その一つが資本性劣後ローンの創設で、それによる借入金は金融機関の査定において自己資本とみなすことができるので、財務体質の改善・強化につながる。物価高騰の影響を受け、超過債務により民間金融機関から融資が受けられない民間病院においては、融資の再開が期待される。 病院運営の構造転換を図る大学病院64箇所程度にそれぞれ約5億円の支援 病院関連では、国公私立81大学病院の2024年度の経常収支が508億円と過去最大の赤字となったことを踏まえ、文部科学省補正予算案において「大学病院機能強化推進事業」として349億円が計上された。これは、病院運営の構造転換を図る大学病院に対して、診療報酬では補てんされていない教育・研究の質を高めるための経費を支援するものだ。交付は64箇所程度で、それぞれ5億円程度を想定している。 なお、政府は2025年度補正予算案を12月上旬に臨時国会に提出し、早期の成立を目指す。(HealthDay News 2025年12月10日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/25hosei/index.html https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00010.html https://www.kantei.go.jp/jp/headline/sougoukeizaitaisaku2025/index.html Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved. カテゴリー:医療制度、診療報酬