2型糖尿病に喘息を併発している成人患者に対してGLP-1受容体作動薬を用いると、喘息の増悪が抑制される可能性を示すデータが報告された。米ハーバード大学医学大学院のDinah Foer氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に4月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬は、国内外で2型糖尿病治療薬として使用されており、米国では最近、肥満治療目的での使用も認められた。同薬については血糖降下や肥満改善の他に、基礎研究から気道の炎症と過敏性を軽減する作用も有することが報告されている。Foer氏らは、喘息併発2型糖尿病患者のうち、GLP-1受容体作動薬で治療されている患者と、その他の血糖降下薬で治療されている患者とで、喘息コントロール状態への影響が異なるかを検討した。 2000年1月~2018年3月の医療データベースの情報を後方視的に解析。主要評価項目は喘息の増悪が認められた回数、二次評価項目は喘息症状のための受診回数とした。メトホルミンベースの治療に、血糖管理強化目的でGLP-1受容体作動薬が追加されていた患者と、その他の血糖降下薬が追加されていた患者の背景因子を傾向スコアによりマッチさせた上で、GLP-1受容体作動薬群448人、SGLT2阻害薬群112人、DPP-4阻害薬群435人、SU薬群2,253人、基礎インスリン群2,692人を解析対象とした。 複数の交絡因子を調整後、6カ月間の観察期間中に認められた喘息増悪回数は、GLP-1受容体作動薬群が他群に比較して有意に少なかった。GLP-1受容体作動薬群を基準とした他群の喘息増悪発生率比(IRR)は以下のとおり。SGLT2阻害薬群2.98(95%信頼区間1.30~6.80)、DPP-4阻害薬群2.45(同1.54~3.89)、SU薬群1.83(1.20~2.77)、基礎インスリン群2.58(1.72~3.88)。二次評価項目である喘息症状のための受診回数も、GLP-1受容体作動薬群が他群より少なかった。 この結果を著者らは、「2型糖尿病に対してGLP-1受容体作動薬が処方されていた成人喘息患者は、他の血糖降下薬で治療されていた患者に比較して喘息増悪回数が少なかった」とまとめている。その上で、「本研究により、2型糖尿病と肥満の治療に用いられているGLP-1受容体作動薬が、喘息の患者にも有用である可能性が、初めて実臨床で示された。GLP-1受容体作動薬は、代謝性疾患を有する喘息患者の新しい治療選択肢となる可能性がある」と語っている。 なお、2人の著者が、バイオ医薬品メーカー、医療機器メーカーとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年6月14日).https://consumer.healthday.com/asthma-exacerbation….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
2型糖尿病に喘息を併発している成人患者に対してGLP-1受容体作動薬を用いると、喘息の増悪が抑制される可能性を示すデータが報告された。米ハーバード大学医学大学院のDinah Foer氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に4月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬は、国内外で2型糖尿病治療薬として使用されており、米国では最近、肥満治療目的での使用も認められた。同薬については血糖降下や肥満改善の他に、基礎研究から気道の炎症と過敏性を軽減する作用も有することが報告されている。Foer氏らは、喘息併発2型糖尿病患者のうち、GLP-1受容体作動薬で治療されている患者と、その他の血糖降下薬で治療されている患者とで、喘息コントロール状態への影響が異なるかを検討した。 2000年1月~2018年3月の医療データベースの情報を後方視的に解析。主要評価項目は喘息の増悪が認められた回数、二次評価項目は喘息症状のための受診回数とした。メトホルミンベースの治療に、血糖管理強化目的でGLP-1受容体作動薬が追加されていた患者と、その他の血糖降下薬が追加されていた患者の背景因子を傾向スコアによりマッチさせた上で、GLP-1受容体作動薬群448人、SGLT2阻害薬群112人、DPP-4阻害薬群435人、SU薬群2,253人、基礎インスリン群2,692人を解析対象とした。 複数の交絡因子を調整後、6カ月間の観察期間中に認められた喘息増悪回数は、GLP-1受容体作動薬群が他群に比較して有意に少なかった。GLP-1受容体作動薬群を基準とした他群の喘息増悪発生率比(IRR)は以下のとおり。SGLT2阻害薬群2.98(95%信頼区間1.30~6.80)、DPP-4阻害薬群2.45(同1.54~3.89)、SU薬群1.83(1.20~2.77)、基礎インスリン群2.58(1.72~3.88)。二次評価項目である喘息症状のための受診回数も、GLP-1受容体作動薬群が他群より少なかった。 この結果を著者らは、「2型糖尿病に対してGLP-1受容体作動薬が処方されていた成人喘息患者は、他の血糖降下薬で治療されていた患者に比較して喘息増悪回数が少なかった」とまとめている。その上で、「本研究により、2型糖尿病と肥満の治療に用いられているGLP-1受容体作動薬が、喘息の患者にも有用である可能性が、初めて実臨床で示された。GLP-1受容体作動薬は、代謝性疾患を有する喘息患者の新しい治療選択肢となる可能性がある」と語っている。 なお、2人の著者が、バイオ医薬品メーカー、医療機器メーカーとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年6月14日).https://consumer.healthday.com/asthma-exacerbation….Abstract/Full Text (subscription or payment may be required).Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.