小児期の性的・感情的虐待は女性の多発性硬化症(MS)リスクの上昇と関連しており、曝露した虐待のカテゴリー数の増加に伴いリスクがさらに上昇することが、「Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に4月4日掲載された研究において明らかになった。.小児期や思春期のトラウマは免疫系を変化させ、自己免疫疾患のリスクを高める可能性がある。しかし、小児期のストレスや有害なイベントがMSの感受性に影響を及ぼすかどうかは不明であり、リスク因子と曝露の時期について理解することは、疾患の予防とともに、そのメカニズムに対する知見を深めることに寄与する可能性がある。.ベルゲン大学(ノルウェー)のKarine Eid氏らは、1999~2008年にNorwegian Mother, Father, and Child cohort study(MoBa)に参加した妊娠中の女性を対象に、全国的な前向きコホート研究を行った。参加女性の18歳以前の虐待歴(性的虐待、感情的虐待、身体的虐待の3つの虐待カテゴリーに分類)を調査するため、妊娠中に回答された自記式質問票をレビューした。追跡期間は2018年12月31日までとし、MoBaコホートをノルウェーMS登録およびバイオバンク(MSR)とノルウェー患者登録(NPR)のデータとリンクさせ、その後のMS診断を特定した。Cox比例ハザードモデルを用いて、虐待への曝露後のMSリスクを評価し、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。.解析対象7万7,997人のうち、1万4,477人(19%)が小児期に虐待を受けており、6万3,520人(81%)は受けていないことが分かった。追跡期間中、300人がMSを発症し、うち71人(24%)が小児期の虐待歴を報告した。一方、MSを発症しなかった7万7,697人のうち、虐待歴を報告したのは1万4,406人(19%)であった。小児期の虐待、MSのいずれとも関連が報告されている社会経済的因子、喫煙状況、ベースライン時のBMIで調整して解析を行ったところ、小児期の性的虐待(HR 1.65、95%CI 1.13~2.39)および感情的虐待(同1.40、1.03~1.90)はいずれもMSのリスク上昇と関連していたが、身体的虐待への曝露によるMSリスクの有意な上昇は見られなかった(同1.31、0.83~2.06)。計3つの虐待カテゴリーのうち、2つまたは3つのカテゴリーの虐待への曝露により、MSリスクはさらに上昇していた(2つ:同1.66、1.04~2.67;3つ:同1.93、1.02~3.67)。また、被虐待時にMSの前駆段階にあった可能性がある女性を除外して感度分析を行った場合でも、小児期の虐待とMSとの間に同等またはより強い関連が認められた(性的虐待:同1.77、1.22~2.57;感情的虐待:同1.40、1.01~1.95)。.著者らは、「逆境を体験した子どもでは、MSの既知の環境的リスク因子とは関係なく、生涯におけるMSの発症リスクが上昇し、リスクは虐待のカテゴリー数の増加に従い用量反応的に上昇した。この関連の背後にあるメカニズムをさらに検討すべきである」と述べている。.なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年4月5日).https://consumer.healthday.com/sexual-emotional-abuse-in-childhood-linked-to-risk-of-ms-2657084578.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
小児期の性的・感情的虐待は女性の多発性硬化症(MS)リスクの上昇と関連しており、曝露した虐待のカテゴリー数の増加に伴いリスクがさらに上昇することが、「Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に4月4日掲載された研究において明らかになった。.小児期や思春期のトラウマは免疫系を変化させ、自己免疫疾患のリスクを高める可能性がある。しかし、小児期のストレスや有害なイベントがMSの感受性に影響を及ぼすかどうかは不明であり、リスク因子と曝露の時期について理解することは、疾患の予防とともに、そのメカニズムに対する知見を深めることに寄与する可能性がある。.ベルゲン大学(ノルウェー)のKarine Eid氏らは、1999~2008年にNorwegian Mother, Father, and Child cohort study(MoBa)に参加した妊娠中の女性を対象に、全国的な前向きコホート研究を行った。参加女性の18歳以前の虐待歴(性的虐待、感情的虐待、身体的虐待の3つの虐待カテゴリーに分類)を調査するため、妊娠中に回答された自記式質問票をレビューした。追跡期間は2018年12月31日までとし、MoBaコホートをノルウェーMS登録およびバイオバンク(MSR)とノルウェー患者登録(NPR)のデータとリンクさせ、その後のMS診断を特定した。Cox比例ハザードモデルを用いて、虐待への曝露後のMSリスクを評価し、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。.解析対象7万7,997人のうち、1万4,477人(19%)が小児期に虐待を受けており、6万3,520人(81%)は受けていないことが分かった。追跡期間中、300人がMSを発症し、うち71人(24%)が小児期の虐待歴を報告した。一方、MSを発症しなかった7万7,697人のうち、虐待歴を報告したのは1万4,406人(19%)であった。小児期の虐待、MSのいずれとも関連が報告されている社会経済的因子、喫煙状況、ベースライン時のBMIで調整して解析を行ったところ、小児期の性的虐待(HR 1.65、95%CI 1.13~2.39)および感情的虐待(同1.40、1.03~1.90)はいずれもMSのリスク上昇と関連していたが、身体的虐待への曝露によるMSリスクの有意な上昇は見られなかった(同1.31、0.83~2.06)。計3つの虐待カテゴリーのうち、2つまたは3つのカテゴリーの虐待への曝露により、MSリスクはさらに上昇していた(2つ:同1.66、1.04~2.67;3つ:同1.93、1.02~3.67)。また、被虐待時にMSの前駆段階にあった可能性がある女性を除外して感度分析を行った場合でも、小児期の虐待とMSとの間に同等またはより強い関連が認められた(性的虐待:同1.77、1.22~2.57;感情的虐待:同1.40、1.01~1.95)。.著者らは、「逆境を体験した子どもでは、MSの既知の環境的リスク因子とは関係なく、生涯におけるMSの発症リスクが上昇し、リスクは虐待のカテゴリー数の増加に従い用量反応的に上昇した。この関連の背後にあるメカニズムをさらに検討すべきである」と述べている。.なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2022年4月5日).https://consumer.healthday.com/sexual-emotional-abuse-in-childhood-linked-to-risk-of-ms-2657084578.html.Abstract/Full Text.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock