心筋梗塞(MI)の発症直後は、MI発症と全般的な認知機能、記憶力、または遂行機能の低下との間に関連は認められない一方で、MI発症からの時間経過に伴ってこれらの認知機能の低下速度がより速くなるという研究結果が、「JAMA Neurology」に5月30日掲載された論文で明らかにされた。.米ジョンズ・ホプキンス大学のMichelle C. Johansen氏らは、MI発症が認知機能の変化に関与しているかどうかを調べるコホート研究を実施した。このコホート研究には、1971~2019年に実施された6件の米国の集団ベース前向きコホート研究(Atherosclerosis Risk in Communities Study、Coronary Artery Risk Development in Young Adults Study、Cardiovascular Health Study、Framingham Offspring Study、Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis、Northern Manhattan Study)のいずれかに参加し、MI、認知症、脳卒中の既往のない成人で、共変量(年齢、性別、LDLコレステロール値、収縮期血圧の累積平均値など)のデータを入手できた3万465例(平均年齢64±10歳、女性56%)を組み入れた。.主要アウトカムは全般的な認知機能の変化とし、副次的アウトカムは、記憶および遂行機能の変化とした。認知機能のアウトカムは平均50点のTスコア〔標準偏差が10点の正規分布に近似するように変換した値(偏差値)〕として標準化した。線形混合効果モデルを用いた解析では、MI発症前の認知機能の経過および参加者要因を調整し、人種と性別の交互作用項を投入して、MI発症直後の認知機能の低下量と、MI発症後の長期的な認知機能の低下速度を評価した。.追跡期間(中央値6.4年、四分位範囲4.9~19.7)中に1件以上のMIイベントが発生した参加者は3万465例中1,033例、発生しなかった参加者は2万9,432例であった。線形混合効果モデルで解析したところ、MI発症直後には、MI発症と認知機能低下との間に関連が認められず、MI発症直後のTスコアの変化量は、全般的な認知機能-0.18点〔95%信頼区間(CI)-0.52~0.17)、遂行機能-0.17点(同-0.53~0.18)、記憶0.62点(同-0.07~1.31)〕であった。しかし、MI発症前と比較したMI発症後の長期的な認知機能の低下速度は、MI発症例の方が非発症例よりも速く、MI発症例におけるTスコアの低下速度は、全般的な認知機能-0.15点/年(95%CI -0.21~-0.10)、記憶-0.13点/年(同-0.22~-0.04)、遂行機能-0.14点/年(同-0.20~-0.08)であった。.交互作用解析の結果、人種および性別は、MI発症直後の全般的な認知機能の低下量に影響を及ぼすことが明らかになった(人種と認知機能の交互作用項のP=0.02、性別と認知機能の交互作用項のP=0.04)。さらに、MI発症後の全般的な認知機能の長期的な低下速度は、白人よりも黒人の方が遅く(傾きの変化量の差0.22点/年、95%CI 0.04~0.40)、男性よりも女性で遅いことが示された(同0.12点/年、0.01~0.23)。.著者らは、「本研究は、公衆衛生上重要な意義を持つ。MI発症リスクのある患者にカウンセリングを行う際には、MIの潜在的な認知機能への影響について話し合うことが、カウンセリングの動機として考慮されるべきである」と述べている。.なお、一名の著者がJohnson & Johnsonとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしており、複数の著者が本研究以外の助成金に関する情報を報告している。(HealthDay News 2023年6月5日).https://consumer.healthday.com/incident-mi-tied-to-faster-declines-in-cognitive-function-over-time-2660716844.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
心筋梗塞(MI)の発症直後は、MI発症と全般的な認知機能、記憶力、または遂行機能の低下との間に関連は認められない一方で、MI発症からの時間経過に伴ってこれらの認知機能の低下速度がより速くなるという研究結果が、「JAMA Neurology」に5月30日掲載された論文で明らかにされた。.米ジョンズ・ホプキンス大学のMichelle C. Johansen氏らは、MI発症が認知機能の変化に関与しているかどうかを調べるコホート研究を実施した。このコホート研究には、1971~2019年に実施された6件の米国の集団ベース前向きコホート研究(Atherosclerosis Risk in Communities Study、Coronary Artery Risk Development in Young Adults Study、Cardiovascular Health Study、Framingham Offspring Study、Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis、Northern Manhattan Study)のいずれかに参加し、MI、認知症、脳卒中の既往のない成人で、共変量(年齢、性別、LDLコレステロール値、収縮期血圧の累積平均値など)のデータを入手できた3万465例(平均年齢64±10歳、女性56%)を組み入れた。.主要アウトカムは全般的な認知機能の変化とし、副次的アウトカムは、記憶および遂行機能の変化とした。認知機能のアウトカムは平均50点のTスコア〔標準偏差が10点の正規分布に近似するように変換した値(偏差値)〕として標準化した。線形混合効果モデルを用いた解析では、MI発症前の認知機能の経過および参加者要因を調整し、人種と性別の交互作用項を投入して、MI発症直後の認知機能の低下量と、MI発症後の長期的な認知機能の低下速度を評価した。.追跡期間(中央値6.4年、四分位範囲4.9~19.7)中に1件以上のMIイベントが発生した参加者は3万465例中1,033例、発生しなかった参加者は2万9,432例であった。線形混合効果モデルで解析したところ、MI発症直後には、MI発症と認知機能低下との間に関連が認められず、MI発症直後のTスコアの変化量は、全般的な認知機能-0.18点〔95%信頼区間(CI)-0.52~0.17)、遂行機能-0.17点(同-0.53~0.18)、記憶0.62点(同-0.07~1.31)〕であった。しかし、MI発症前と比較したMI発症後の長期的な認知機能の低下速度は、MI発症例の方が非発症例よりも速く、MI発症例におけるTスコアの低下速度は、全般的な認知機能-0.15点/年(95%CI -0.21~-0.10)、記憶-0.13点/年(同-0.22~-0.04)、遂行機能-0.14点/年(同-0.20~-0.08)であった。.交互作用解析の結果、人種および性別は、MI発症直後の全般的な認知機能の低下量に影響を及ぼすことが明らかになった(人種と認知機能の交互作用項のP=0.02、性別と認知機能の交互作用項のP=0.04)。さらに、MI発症後の全般的な認知機能の長期的な低下速度は、白人よりも黒人の方が遅く(傾きの変化量の差0.22点/年、95%CI 0.04~0.40)、男性よりも女性で遅いことが示された(同0.12点/年、0.01~0.23)。.著者らは、「本研究は、公衆衛生上重要な意義を持つ。MI発症リスクのある患者にカウンセリングを行う際には、MIの潜在的な認知機能への影響について話し合うことが、カウンセリングの動機として考慮されるべきである」と述べている。.なお、一名の著者がJohnson & Johnsonとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしており、複数の著者が本研究以外の助成金に関する情報を報告している。(HealthDay News 2023年6月5日).https://consumer.healthday.com/incident-mi-tied-to-faster-declines-in-cognitive-function-over-time-2660716844.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock