分娩時の疼痛管理に硬膜外麻酔による鎮痛(labor epidural analgesia;LEA)を行うと、生まれた児の自閉症スペクトラム障害(ASD)リスクが上昇するという研究結果が、「JAMA Network Open」に7月21日発表された。また、LEAとオキシトシンを併用するとASDリスクはさらに上昇したが、オキシトシン単独の場合には有意な関連は認められなかった。.米カイザーパーマネンテ・ボールドウィンパーク・メディカルセンターのChunyuan Qiu氏らは、2008~2017年の自施設における経腟分娩による単胎分娩20万5,994人のデータを用い、分娩時のLEAおよびオキシトシンの使用と生まれた児のASDの関連について分析した。生まれた児を2021年12月31日まで追跡した。解析は、生年、母親の年齢、妊娠中のBMIなど、関連が予想される因子をCox比例ハザード回帰モデルにより調整して行い、両側検定を行った。.追跡期間中に5,146人(2.5%)が追跡期間中にASDと診断された。分娩時には、児の74.7%(15万3,880人)がLEAに、57.2%(11万7,808人)がオキシトシンに、それぞれ曝露されていた。ただ、児がオキシトシンへ曝露された割合は、LEA曝露がなかった場合よりもLEA曝露があった場合の方が高かった(67.7%対26.1%)。LEA曝露によるASDリスクは、オキシトシン曝露とは独立していた〔ハザード比(HR)1.28、95%信頼区間(CI)1.18~1.38〕。一方で、LEA曝露で調整すると、オキシトシン曝露とASDリスクとの間に有意な関連は認められなかった(同1.05、0.99~1.12)。.児のASDリスクに関しては、LEA曝露とオキシトシン曝露との間で有意な交互作用が認められた(交互作用のP=0.02)。HRは、LEAにもオキシトシンにも曝露されなかった場合を1とすると、LEA単独では1.20(95%CI 1.09~1.32)と有意に高く、LEAとオキシトシンを併用した場合には1.30(同1.20~1.42)とさらに高まったが、オキシトシン単独では0.90(同0.78~1.04)と有意な関連は認められなかった。.著者らは、「今回の結果から、分娩時のLEAは児のASDリスク上昇と関連しており、オキシトシンを併用すると、そのリスクはさらに高まると考えられた」と結論。「ただし、LEAとオキシトシンは分娩時の疼痛管理に有益であること、また、ASDの発症率は比較的低く、かつ発症にはさまざまなリスク因子が関与することから、分娩時の医療介入を選択する際には、全体的なリスクとベネフィットのバランスを考慮して判断すべきだ」と述べている。(HealthDay News 2023年7月26日)。.https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-autism-2662311501.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
分娩時の疼痛管理に硬膜外麻酔による鎮痛(labor epidural analgesia;LEA)を行うと、生まれた児の自閉症スペクトラム障害(ASD)リスクが上昇するという研究結果が、「JAMA Network Open」に7月21日発表された。また、LEAとオキシトシンを併用するとASDリスクはさらに上昇したが、オキシトシン単独の場合には有意な関連は認められなかった。.米カイザーパーマネンテ・ボールドウィンパーク・メディカルセンターのChunyuan Qiu氏らは、2008~2017年の自施設における経腟分娩による単胎分娩20万5,994人のデータを用い、分娩時のLEAおよびオキシトシンの使用と生まれた児のASDの関連について分析した。生まれた児を2021年12月31日まで追跡した。解析は、生年、母親の年齢、妊娠中のBMIなど、関連が予想される因子をCox比例ハザード回帰モデルにより調整して行い、両側検定を行った。.追跡期間中に5,146人(2.5%)が追跡期間中にASDと診断された。分娩時には、児の74.7%(15万3,880人)がLEAに、57.2%(11万7,808人)がオキシトシンに、それぞれ曝露されていた。ただ、児がオキシトシンへ曝露された割合は、LEA曝露がなかった場合よりもLEA曝露があった場合の方が高かった(67.7%対26.1%)。LEA曝露によるASDリスクは、オキシトシン曝露とは独立していた〔ハザード比(HR)1.28、95%信頼区間(CI)1.18~1.38〕。一方で、LEA曝露で調整すると、オキシトシン曝露とASDリスクとの間に有意な関連は認められなかった(同1.05、0.99~1.12)。.児のASDリスクに関しては、LEA曝露とオキシトシン曝露との間で有意な交互作用が認められた(交互作用のP=0.02)。HRは、LEAにもオキシトシンにも曝露されなかった場合を1とすると、LEA単独では1.20(95%CI 1.09~1.32)と有意に高く、LEAとオキシトシンを併用した場合には1.30(同1.20~1.42)とさらに高まったが、オキシトシン単独では0.90(同0.78~1.04)と有意な関連は認められなかった。.著者らは、「今回の結果から、分娩時のLEAは児のASDリスク上昇と関連しており、オキシトシンを併用すると、そのリスクはさらに高まると考えられた」と結論。「ただし、LEAとオキシトシンは分娩時の疼痛管理に有益であること、また、ASDの発症率は比較的低く、かつ発症にはさまざまなリスク因子が関与することから、分娩時の医療介入を選択する際には、全体的なリスクとベネフィットのバランスを考慮して判断すべきだ」と述べている。(HealthDay News 2023年7月26日)。.https://consumer.healthday.com/physician-s-briefing-autism-2662311501.html.Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock