新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に、病院のケアの質が低下していた実態が米国から報告された。パンデミック前の評価が高かった病院は、パンデミック初期の評価の下げ幅は比較的抑えられていたものの、パンデミックが長期化するに伴い影響が拡大していたという。米ランド研究所のMarc N. Elliott氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Health Forum」に8月25日掲載された。.COVID-19パンデミックによって医療の現場に大きな混乱が生じ、提供するケアの質が低下したと考えられるが、これまでその詳細は不明だった。Elliott氏らはパンデミックの影響の実態を、米国内の急性期病院で行われている患者満足度調査(HCAHPS)の結果を用いて、定量的に検討した。HCAHPSは2008年に始まり、四半期ごとに最新情報が公表され、調査結果に基づくランク付けは診療報酬にも反映されている。.この研究は、2020~2021年に米国内3,381病院から退院した390万887人(59%が65歳以上で、35%が外科、11%が産科の患者)のHCAHPS評価結果を、2018~2019年のデータを基に経時的な推移を見込んだ予測値と比較するという手法で行われた。.HCAHPSの10種類の評価項目(医師・看護師とのコミュニケーション、スタッフの対応力、清潔さ、静粛性など)の加重平均スコアである「HCAHPS-SS」は、2020年第1四半期は予測値に対して-0.04パーセントポイント(pp)であり有意差がなかった(P=0.52)。しかし同年の第2四半期は、-1.20pp(P<0.001)と有意に低くなっていた。それ以降、2020年は四半期ごとに-2.00、-1.91ppであり、さらに2021年に入ると-1.93、-2.34、-3.36、-3.57ppと、予測値との差が拡大していた(全てP<0.001)。.最も影響を受けた評価項目は、2021年第4四半期のスタッフの対応力(-5.6pp)と清潔さ(-4.9pp)だった。反対に、退院時情報提供(-1.6pp)と静粛性(-1.8pp)は影響が少なかった。.スタッフ数が多い病院ほど、HCAHPS-SSの低下が抑制されていたことも明らかになった。例えば2020年第2四半期において、パンデミック以前の病床数に対するスタッフ数の第1四分位群は、予測値に対して-1.83pp低かったのに対して、第4四分位群では-0.98ppだった。.また、パンデミック以前の評価が高い病院は、パンデミック初期にはケアの質の低下が抑制されていた。具体的には、星の数が一つまたは二つの病院に比較して五つ星病院は2021年の第2四半期まで、HCAHPS-SSの予測値との乖離の幅が約25%程度少なかった。ただし、同年第4四半期は、予測値との乖離が一つ星/二つ星病院は-3.74pp、五つ星病院も-3.20ppであり、群間差は13%に狭まっていた。.著者らは、「最も影響を受けた評価項目がスタッフの対応力と清潔さであったことは、おそらく、スタッフの欠勤率の高さを反映した結果だと考えられる。パンデミック前の時点でパフォーマンスが低くスタッフ数が十分でなかった病院は、状況の急変への対応力が低かった可能性がある。ただし、パンデミック以前の評価が高かった病院も、2021年第4四半期までには同様の影響が生じていた」とまとめている。(HealthDay News 2023年9月1日).https://consumer.healthday.com/patient-experience-scores-for-hospital-care-decreased-during-covid-19-2664347686.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に、病院のケアの質が低下していた実態が米国から報告された。パンデミック前の評価が高かった病院は、パンデミック初期の評価の下げ幅は比較的抑えられていたものの、パンデミックが長期化するに伴い影響が拡大していたという。米ランド研究所のMarc N. Elliott氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Health Forum」に8月25日掲載された。.COVID-19パンデミックによって医療の現場に大きな混乱が生じ、提供するケアの質が低下したと考えられるが、これまでその詳細は不明だった。Elliott氏らはパンデミックの影響の実態を、米国内の急性期病院で行われている患者満足度調査(HCAHPS)の結果を用いて、定量的に検討した。HCAHPSは2008年に始まり、四半期ごとに最新情報が公表され、調査結果に基づくランク付けは診療報酬にも反映されている。.この研究は、2020~2021年に米国内3,381病院から退院した390万887人(59%が65歳以上で、35%が外科、11%が産科の患者)のHCAHPS評価結果を、2018~2019年のデータを基に経時的な推移を見込んだ予測値と比較するという手法で行われた。.HCAHPSの10種類の評価項目(医師・看護師とのコミュニケーション、スタッフの対応力、清潔さ、静粛性など)の加重平均スコアである「HCAHPS-SS」は、2020年第1四半期は予測値に対して-0.04パーセントポイント(pp)であり有意差がなかった(P=0.52)。しかし同年の第2四半期は、-1.20pp(P<0.001)と有意に低くなっていた。それ以降、2020年は四半期ごとに-2.00、-1.91ppであり、さらに2021年に入ると-1.93、-2.34、-3.36、-3.57ppと、予測値との差が拡大していた(全てP<0.001)。.最も影響を受けた評価項目は、2021年第4四半期のスタッフの対応力(-5.6pp)と清潔さ(-4.9pp)だった。反対に、退院時情報提供(-1.6pp)と静粛性(-1.8pp)は影響が少なかった。.スタッフ数が多い病院ほど、HCAHPS-SSの低下が抑制されていたことも明らかになった。例えば2020年第2四半期において、パンデミック以前の病床数に対するスタッフ数の第1四分位群は、予測値に対して-1.83pp低かったのに対して、第4四分位群では-0.98ppだった。.また、パンデミック以前の評価が高い病院は、パンデミック初期にはケアの質の低下が抑制されていた。具体的には、星の数が一つまたは二つの病院に比較して五つ星病院は2021年の第2四半期まで、HCAHPS-SSの予測値との乖離の幅が約25%程度少なかった。ただし、同年第4四半期は、予測値との乖離が一つ星/二つ星病院は-3.74pp、五つ星病院も-3.20ppであり、群間差は13%に狭まっていた。.著者らは、「最も影響を受けた評価項目がスタッフの対応力と清潔さであったことは、おそらく、スタッフの欠勤率の高さを反映した結果だと考えられる。パンデミック前の時点でパフォーマンスが低くスタッフ数が十分でなかった病院は、状況の急変への対応力が低かった可能性がある。ただし、パンデミック以前の評価が高かった病院も、2021年第4四半期までには同様の影響が生じていた」とまとめている。(HealthDay News 2023年9月1日).https://consumer.healthday.com/patient-experience-scores-for-hospital-care-decreased-during-covid-19-2664347686.html.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock