健康保険に加入していても、出生時に居住地域の環境が好ましくなかった場合には、その後に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断される可能性が高くなるとする研究結果が、「JAMA Psychiatry」に11月15日掲載された短報で報告された。.米南カリフォルニア大学空間科学研究所のXin Yu氏らは、2001~2014年の間に統合ヘルスケアを提供するカイザー・パーマネンテ南カリフォルニア(KPSC)の病院で出産した母親31万8,372人とその児(全て単胎)のデータを用いて、出生時の居住地域の環境がどれほど好ましくないものであったかと、児がASDと診断される率との関連を検討した。児は、国際疾患分類(ICD)の第9および10版に基づくASDの診断が2回以上ある場合に、ASDであると見なした。追跡期間は、児が1歳になったときから、初めてASDと診断されるか、KPSCの会員資格の最終日を迎えるか、死亡するか、追跡終了日(2019年12月31日)を迎えるか、のうち最初に起きた日までとした。出生時の居住地域の環境がどの程度好ましくないものであったかを表す指標として、7つの国勢統計区の指標(貧困率、失業率、母子世帯率、公的援助の利用率、高校未卒業者の割合、学士号以上の学歴保持者の割合、専門職従事者の割合)から、主成分分析を用いて「環境不良度指数(neighborhood disadvantage index)」を作成した。.追跡期間中に6,357人(2.00%)がASDの診断を受けていた(診断時の年齢中央値3.53歳)。Cox比例ハザード回帰モデルにより、出生年、母親の年齢、母親の人種/民族、母親の学歴などを調整して検討した結果、児がASDと診断されるリスクは、居住地域の環境が好ましくないほど高いことが明らかになった〔環境不良度指数の四分位範囲(IQR)が2.70増加するごとのハザード比(HR)1.07、95%信頼区間(CI)1.02〜1.11〕。また、交互作用モデルにより母親の特性と児のASDとの関連を検討したところ、白人の母親の児と比べて、人種/民族がマイノリティ(黒人、アジア系または太平洋諸島系、ヒスパニック系、ラテン系)である母親の児は、ASDのリスクが高かった〔白人の母を1とした場合のHRは、黒人で1.13(95%CI 1.02〜1.25)、アジア系または太平洋諸島系で1.10(同1.02〜1.20)、ヒスパニック系またはラテン系で1.07(同1.00〜1.15)〕。さらに、母親の人種/民族と好ましくない環境との間には交互作用が認められ(対数尤度の差21.88、自由度4のχ2分布下での交互作用のP<0.001)、好ましくない環境は白人の母親の児においてのみASDと関連していた(白人でのIQRが2.00増加するごとのHR 1.17、95%CI 1.09〜1.26)。.著者らは、「全ての人が等しくスクリーニングと診断を受けられるようにする必要がある。それに加え、ASDの診断率の高い地域や集団に対しては資金を投入して早期に介入し、また家族を支援すべきだ」と結論付けている。(HealthDay News 2023年11月15日).https://www.healthday.com/healthpro-news/child-health/neighborhood-disadvantage-tied-to-higher-risk-for-autism-diagnosis.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
健康保険に加入していても、出生時に居住地域の環境が好ましくなかった場合には、その後に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断される可能性が高くなるとする研究結果が、「JAMA Psychiatry」に11月15日掲載された短報で報告された。.米南カリフォルニア大学空間科学研究所のXin Yu氏らは、2001~2014年の間に統合ヘルスケアを提供するカイザー・パーマネンテ南カリフォルニア(KPSC)の病院で出産した母親31万8,372人とその児(全て単胎)のデータを用いて、出生時の居住地域の環境がどれほど好ましくないものであったかと、児がASDと診断される率との関連を検討した。児は、国際疾患分類(ICD)の第9および10版に基づくASDの診断が2回以上ある場合に、ASDであると見なした。追跡期間は、児が1歳になったときから、初めてASDと診断されるか、KPSCの会員資格の最終日を迎えるか、死亡するか、追跡終了日(2019年12月31日)を迎えるか、のうち最初に起きた日までとした。出生時の居住地域の環境がどの程度好ましくないものであったかを表す指標として、7つの国勢統計区の指標(貧困率、失業率、母子世帯率、公的援助の利用率、高校未卒業者の割合、学士号以上の学歴保持者の割合、専門職従事者の割合)から、主成分分析を用いて「環境不良度指数(neighborhood disadvantage index)」を作成した。.追跡期間中に6,357人(2.00%)がASDの診断を受けていた(診断時の年齢中央値3.53歳)。Cox比例ハザード回帰モデルにより、出生年、母親の年齢、母親の人種/民族、母親の学歴などを調整して検討した結果、児がASDと診断されるリスクは、居住地域の環境が好ましくないほど高いことが明らかになった〔環境不良度指数の四分位範囲(IQR)が2.70増加するごとのハザード比(HR)1.07、95%信頼区間(CI)1.02〜1.11〕。また、交互作用モデルにより母親の特性と児のASDとの関連を検討したところ、白人の母親の児と比べて、人種/民族がマイノリティ(黒人、アジア系または太平洋諸島系、ヒスパニック系、ラテン系)である母親の児は、ASDのリスクが高かった〔白人の母を1とした場合のHRは、黒人で1.13(95%CI 1.02〜1.25)、アジア系または太平洋諸島系で1.10(同1.02〜1.20)、ヒスパニック系またはラテン系で1.07(同1.00〜1.15)〕。さらに、母親の人種/民族と好ましくない環境との間には交互作用が認められ(対数尤度の差21.88、自由度4のχ2分布下での交互作用のP<0.001)、好ましくない環境は白人の母親の児においてのみASDと関連していた(白人でのIQRが2.00増加するごとのHR 1.17、95%CI 1.09〜1.26)。.著者らは、「全ての人が等しくスクリーニングと診断を受けられるようにする必要がある。それに加え、ASDの診断率の高い地域や集団に対しては資金を投入して早期に介入し、また家族を支援すべきだ」と結論付けている。(HealthDay News 2023年11月15日).https://www.healthday.com/healthpro-news/child-health/neighborhood-disadvantage-tied-to-higher-risk-for-autism-diagnosis.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock