母親の胎盤でのB群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalactiae;GBS)のDNA検出は、生まれてくる児の新生児室(NNU)入室リスクの増加と関連を有することが、「Nature Microbiology」に2023年11月29日掲載された論文で明らかにされた。.GBSは、早発性(生後1週間以内に発症)新生児敗血症の原因菌として最も頻繁に報告される細菌の一つである。英ケンブリッジ大学のFrancesca Gaccioli氏らによる過去の研究(pregnancy outcome prediction study;POP研究)では、出産前の女性の約5%の胎盤にGBSのDNAが検出されたが、その臨床的な意味は明らかになっていなかった。.Gaccioli氏らは今回、このデータの再解析を行い、胎盤中のGBSと児のNNU入室リスクとの関連を検討した。対象としたのは、POP研究のコホート4,212人のうち、出産前に胎盤中のGBS DNAの検査が行われていた537人から早期産で出産した100人とデータ欠測1人を除いた、正期産で出産した母親436人。このうち30人の母親では胎盤にGBS DNAが検出されていたが、これらの母親の児の23.3%(7/30人)とGBS DNAが検出されなかった406人の母親の児の8.4%(34/406人)が生後48時間以内に48時間以上NNUに入室しており、GBS DNA検出母体の児がNUUに入室するオッズ比(OR)は3.3〔95%信頼区間(CI)1.3~7.8、P=0.007〕となった。母体因子を調整した多変量ロジスティック回帰モデルで解析しても、調整ORは3.1(同1.2〜8.0、P=0.02)と同様の結果だった。.これとは全く別に、正期産で出産し、胎盤が生検され、生児を得た者を、POP研究コホートから抽出したところ、NNUに入室(入室時期や入室期間に制限なし)した児は239人、入室しなかった児は686人いた。胎盤にGBS DNAが検出された母親の児の44.4%(16/36人)、検出されなかった母親の児の25.1%(223/889人)がNUUに入室しており、NNU入室の調整ORは2.4(同1.2〜4.6)と、同様の結果となった。.次に、胎盤にGBS DNAが検出された母親から生まれNNUに入室した児16人を、臨床的エビデンスに基づいて、敗血症の兆候なし(2人)、敗血症疑い(2人)、培養陰性だがほぼ確実な敗血症(10人)、確定診断された敗血症(2人)に分類して検討した。その結果、NNU入室との間に強い関連が認められたのは、培養陰性だがほぼ確実な敗血症群(OR 4.8、95%CI 2.2〜10.3、P<0.0001)、および確定診断された敗血症群(同66.6、7.3〜963.7、P=0.003)であった。さらに、胎盤にGBS DNAが検出された母親から生まれた児11人、および検出されず入室もしなかった児129人から、臍帯血清サンプルが入手できた。胎児サイトカインストーム(臍帯血中の炎症性サイトカインの2種類以上が対照群の中央値の10倍以上と定義)が生じていたのは、それぞれ36%(4/11)、4%(5/129)であって、ORは14.2(同3.6〜69.8、P=0.002)に及んだ。結果を総合すると、正期産児約200人に1人は胎盤にGBSが検出され、これはNNU入室などに関与していることとなった。.著者らは、「この研究で、胎盤でGBS DNAが検出されることと、児のNNU入室率が増えることとは、関連を有することが示された。これを原因別に分析した結果として、培養陰性であるがほぼ確実な敗血症、および培養陽性で確定診断された敗血症の症例が入室する率が増えることにより、この関連が説明できると考えられる」と述べている。.なお、複数の著者が、バイオ医薬品業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年12月29日).https://www.healthday.com/healthpro-news/child-health/placental-group-b-strep-tied-to-neonatal-unit-admission-in-infants-born-at-term.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
母親の胎盤でのB群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalactiae;GBS)のDNA検出は、生まれてくる児の新生児室(NNU)入室リスクの増加と関連を有することが、「Nature Microbiology」に2023年11月29日掲載された論文で明らかにされた。.GBSは、早発性(生後1週間以内に発症)新生児敗血症の原因菌として最も頻繁に報告される細菌の一つである。英ケンブリッジ大学のFrancesca Gaccioli氏らによる過去の研究(pregnancy outcome prediction study;POP研究)では、出産前の女性の約5%の胎盤にGBSのDNAが検出されたが、その臨床的な意味は明らかになっていなかった。.Gaccioli氏らは今回、このデータの再解析を行い、胎盤中のGBSと児のNNU入室リスクとの関連を検討した。対象としたのは、POP研究のコホート4,212人のうち、出産前に胎盤中のGBS DNAの検査が行われていた537人から早期産で出産した100人とデータ欠測1人を除いた、正期産で出産した母親436人。このうち30人の母親では胎盤にGBS DNAが検出されていたが、これらの母親の児の23.3%(7/30人)とGBS DNAが検出されなかった406人の母親の児の8.4%(34/406人)が生後48時間以内に48時間以上NNUに入室しており、GBS DNA検出母体の児がNUUに入室するオッズ比(OR)は3.3〔95%信頼区間(CI)1.3~7.8、P=0.007〕となった。母体因子を調整した多変量ロジスティック回帰モデルで解析しても、調整ORは3.1(同1.2〜8.0、P=0.02)と同様の結果だった。.これとは全く別に、正期産で出産し、胎盤が生検され、生児を得た者を、POP研究コホートから抽出したところ、NNUに入室(入室時期や入室期間に制限なし)した児は239人、入室しなかった児は686人いた。胎盤にGBS DNAが検出された母親の児の44.4%(16/36人)、検出されなかった母親の児の25.1%(223/889人)がNUUに入室しており、NNU入室の調整ORは2.4(同1.2〜4.6)と、同様の結果となった。.次に、胎盤にGBS DNAが検出された母親から生まれNNUに入室した児16人を、臨床的エビデンスに基づいて、敗血症の兆候なし(2人)、敗血症疑い(2人)、培養陰性だがほぼ確実な敗血症(10人)、確定診断された敗血症(2人)に分類して検討した。その結果、NNU入室との間に強い関連が認められたのは、培養陰性だがほぼ確実な敗血症群(OR 4.8、95%CI 2.2〜10.3、P<0.0001)、および確定診断された敗血症群(同66.6、7.3〜963.7、P=0.003)であった。さらに、胎盤にGBS DNAが検出された母親から生まれた児11人、および検出されず入室もしなかった児129人から、臍帯血清サンプルが入手できた。胎児サイトカインストーム(臍帯血中の炎症性サイトカインの2種類以上が対照群の中央値の10倍以上と定義)が生じていたのは、それぞれ36%(4/11)、4%(5/129)であって、ORは14.2(同3.6〜69.8、P=0.002)に及んだ。結果を総合すると、正期産児約200人に1人は胎盤にGBSが検出され、これはNNU入室などに関与していることとなった。.著者らは、「この研究で、胎盤でGBS DNAが検出されることと、児のNNU入室率が増えることとは、関連を有することが示された。これを原因別に分析した結果として、培養陰性であるがほぼ確実な敗血症、および培養陽性で確定診断された敗血症の症例が入室する率が増えることにより、この関連が説明できると考えられる」と述べている。.なお、複数の著者が、バイオ医薬品業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年12月29日).https://www.healthday.com/healthpro-news/child-health/placental-group-b-strep-tied-to-neonatal-unit-admission-in-infants-born-at-term.Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock