新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の罹患後症状（post-COVID-19 condition；PCC）の世界保健機関（WHO）による定義は、「感染から3カ月以内に発症し、2カ月以上持続し、日常の機能や発達マイルストーン達成の妨げとなるような症状」であるが、COVID-19に罹患した小児のうち、PCCを発症した者はほとんどいなかったとする多施設共同前向きコホート研究の結果が、「JAMA Network Open」に2023年12月28日掲載された。
カルガリー大学（カナダ）のFrederick Dun-Dery氏らは、カナダの14カ所の小児救急外来（ED）で2020年8月から2022年2月の間に新型コロナウイルスの検査を受け、諸条件を満たした18歳未満の児7,263人を対象とし、小児でのPCC発生率を調べた。児の人口統計学的属性と感染の有無などについては、児がEDを受診した日（以下、受診日）とその14日後に保護者に尋ね、また90日後には慢性的な症状・兆候について調査した。PCCについては、受診日から6カ月後と12カ月後に、保護者に対してInternational Severe Acute Respiratory and Emerging Infection Consortium（ISARIC）のLong-COVID Pediatric Questionnaireを改変した質問票を用いて調査した。また、QOLの評価にはPediatric Quality of Life Inventory-Version 4.0（PedsQL）を用いたが、2歳未満の児では保護者に1〜100点で評価させた。さらに、12カ月後の時点で、その時点およびED受診以前の全般的な健康状態をそれぞれ0〜100点で評価させた。
アウトカムは、受診日から6カ月後と12カ月後における、PCCの定義に合致する症状の発生率やQOLなどとした。受診日から6カ月および12カ月後のPCCの発生率については、Fisherの正確確率検定を用いて比較し、Wald検定で発生率の差の95％信頼区間（CI）を算出した。また、PedsQLと0〜100点で評価されたQOLの群間差はMann-Whitney U検定で比較し、群間差のCIは中央値回帰を用いて計算した。
7,263人中1,454人は新型コロナウイルス陽性、5,809人は陰性の判定を受けていた。このうち、受診日から6カ月後の追跡調査では5,147人（陽性児1,152人、陰性児3,995人）、12カ月後の追跡調査では5,563人（陽性児1,192人、陰性児4,371人）から、PCCの発生率を調べるのに十分なデータが得られた。これらの児の年齢中央値は2.0〔四分位範囲（IQR）0.9〜5.0〕歳で、53.1％（2,956/5,563人）は男児であった。
受診日から6カ月後の時点で、陽性児では1152人中6人（0.52％、95％CI 0.24〜1.13％）、陰性児では3,995人中4人（0.10％、同0.04〜0.26％）に、PCCの定義に一致する症状が生じていたが、差は0.42％（同0.02〜0.94％）に過ぎず、12カ月後の時点でのこれらの数字も、陽性児で1,192人中8人（0.67％、95％CI 0.34〜1.32％）、陰性児で4,371人中7人（0.16％、同0.08〜0.33％）であり、差は0.51％（同0.06〜1.08％）に過ぎなかった。
12カ月後の時点で、0〜100点で評価した全般的な健康状態がED受診以前よりも低いと回答された児の割合は、陽性児で23.6％（170/720人）、陰性児で15.0％（374/2,495人）であり、前者の方が有意に高かった（差8.6％、95％CI 5.2〜12.0％）。一方、PedsQLスコアの中央値（IQR）は、陽性児で98.4（90.0〜100）、陰性児で98.8（91.7〜100）であり、両群間で有意差は認められなかった（差−0.3％、95％CI −1.5〜0.8）。
著者らは、「12カ月後にPCCに合致する症状を有していた児は極めて少なく、また全体的なQOLも陽性者・陰性者の間で大差なかった」と述べている。（HealthDay News 2023年12月28日）
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