遅発性ジスキネジアは患者と介護者の双方にとり大きな負担

遅発性ジスキネジアは患者と介護者の双方にとり大きな負担

遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia;TD)は、介護者にも介護される患者にも大きな負担となっていることが、「Journal of Patient-Reported Outcomes」に11月28日掲載された論文で明らかにされた。

 米Texas Tech University School of Medicine-Permian BasinのRakesh Jain氏らは、TDを呈している患者、およびその患者を無報酬で3カ月以上介護している者の負担を評価するためのオンライン調査を開発・実施し、162人のTD患者の介護者から回答を得た。これらの介護者の平均年齢〔標準偏差(SD)〕は40.0(9.8)歳で、主に両親や保護者(56.2%)を1〜10年間(80.9%)介護していた。患者の原疾患は、双極性障害(BD、41.4%)、大うつ病性障害(MDD、29.6%)、統合失調症(SCZ、29.0%)であった。

 調査では、直近7日間における影響・負担の頻度・程度を、リッカート尺度で5段階に分けてスコア化した。TDが患者に与えた影響は、身体(寝付けない、入浴できないなど24項目)、精神(悲しい、イライラするなど11項目)、日常生活(外出できない、趣味を楽しめないなど9項目)の3領域について介護者に評価させた。また、介護者自身への影響として、介助負担(食料品の買い出し、入浴など14項目)、精神(悲しい、イライラする、ストレスを感じるなど9項目)、日常生活(外出できない、趣味を楽しめないなど12項目)の3領域についても回答させた。さらに、TDが介護者の仕事や活動全般に及ぼした影響をWPAI(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire)および著者らが独自に作成した数個の質問で評価した。

 その結果、身体、精神、日常生活の3領域全てにおいて、4点以上の項目が1個以上あった患者は82.7%に達しており、TDが患者に及ぼす深刻な影響が明らかとなった。これら3領域での患者の平均スコア(SD)は同順で3.2(0.7)点、3.5(0.8)点、2.9(0.7)点であったが、TDの症状が重度または非常に重度の患者では、同順で3.6(0.5)点、3.7(0.8)点、3.2(0.8)点と高かった。

 一方、介護者自身への影響を見たところ、介助負担、精神、日常生活の3領域通算で、TDによる大きな影響があるとした者は23.5%に達し、かつこの割合は、TDの症状が重いほど高かった(TDの症状なし/軽度/中等度で18.1%、重度/非常に重度で25.4%)。さらに、介護者の34.6%が、患者のTDが原因で、しばしばまたは常に、不安・心配を感じていた。

 WPAIの回答に基づき、家事・買物などの介護者の日常的な活動に介護が及ぼす影響を、まず0(影響なし)〜10(完全に制限されている)で評価し、それを10倍して算出したところ、TD患者の介護が原因で活動が制限されている割合は46.4%と推算された。制限の割合は、MDD患者を介護する者で53.3%と最も高く、SCZ患者の介護者で43.3%、BD患者の介護者で43.8%だった。

 介護者のうちの136人(84.0%)は仕事を持っていたが、仕事時間の13.8%を働けずに終えた(アブセンティズム;休業時間/予定された労働時間×100)と推定された。また、介護に関わることで仕事時間の44.0%を奪われた〔プレゼンティズム;仕事の生産性に影響を与える程度を、0(影響なし)10(完全に制限されている)で評価し、これを10倍して算出〕と推定された。これらを総合すると、制約を受けた仕事の割合は49.5%と見積もられた(労働時間/予定された労働時間×プレゼンティズム)。

 著者らは、「主観的な介護負担は、無報酬の介護者において不安を招くリスク因子であることが知られているが、この結果は、TDが介護者に余分な負の影響を与えることをきちんと理解すべきことを示すものだ。今回の結果はまた、TDによる介護負担を総合的に評価するためのツールをヘルスケア担当者が開発する際に役立つと思われる」と述べ、さらに、「今回の研究では、TDが介護者の職業生活にも大きな負担を強いていることも明らかにされた。このことは、TDの社会的負荷を評価する際に勘案すべきものだ」と主張している。

 なお、複数の著者がAdamas、Alkermes、Janssen、Lilly、Lundbeck、Merck、Neos Therapeutics、Neurocrine、Otsuka、Pamlab、Pfizer、Shire、Sunovion、Supernus、Takeda、Teva Pharmaceuticals、Teva Branded Pharmaceutical Products R&D Inc.との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2023年12月8日)

 https://www.healthday.com/healthpro-news/mental-health/tardive-dyskinesia-impacts-patients-and-caregivers

Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

Related Stories

No stories found.
logo
HealthDay Japan
healthdayjapan.com