アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測式は人種問わず同程度の性能

アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測式は人種問わず同程度の性能

アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク予測式は、人種によらず同程度の性能を示すが、男性では女性よりも性能が低くなることが示された。詳細は「JAMA Cardiology」2024年1月号に掲載された。

 米コーネル大学のArnab K. Ghosh氏らは、ASCVDの10年間の発症リスクを予測するために従来使われている人種・男女別のプール化コホートリスク方程式(PCE)について、人種を用いずに最良の適合を得られるようにモデルを改変。人種の代わりに、健康の社会的決定要因(SDOH)を加えることで、その予測能が改善するかどうかを検討した。SDOHとして、社会経済的地位、居住地の都市度、社会的支援の指標などの組み込みが検討された。

 モデルの性能は、米国の脳卒中の前向きコホート研究であるREGARDS(Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke)から、45~79歳でASCVDの既往のない適格な対象者1万1,638人(平均年齢61.8歳、女性58.1%)のデータを用いて評価した。対象者はASCVD発症について10年間追跡調査された。

 その結果、元のPCEと全く同じ変数を含み、最良の適合を獲得した人種・男女別モデル(モデルC)のC統計量は、黒人女性で0.71、黒人男性で0.68、白人女性で0.77、白人男性で0.68となった。このモデルCから人種を除外したモデルD、あるいは人種を除外してSDOHを共変量に追加したモデルEにおいて、C統計量は全ての層で実質的に変化しなかった(モデルDではそれぞれ0.71、0.68、0.76、0.68、モデルEではそれぞれ0.72、0.68、0.77、0.68)。なお、モデルEで追加されたSDOHは、居住地の剥奪指標、低学歴、低所得、貧困地域、無保険、医療者不足地域であった。

 純再分類改善度(NRI)を用いてモデルDとモデルEを比較したところ、女性と比較して、男性では高リスクに正しく分類される純割合が減少することが分かった(黒人女性では39%、白人女性では6%、黒人男性では-15%、白人男性では-7%)。ただし、各モデルの全ての人種・性別層においてNam D'Agostino検定は有意ではなく、全ての群で良好な較正が得られたことが示された。

 著者らは「今回のコホート研究の結果から、PCEによるASCVDアウトカム予測において、人種別モデルの役割は限定的であることが示唆された。われわれの知見は、現在構築されているPCEにおける人種層別化の役割を再考するよう提案している」と述べている。

 なお、複数人の著者が製薬企業や医療機器企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年1月4日)

https://www.healthday.com/medical-news-licensing/cardiovascular-diseases/risk-prediction-equations-for-atherosclerotic-cvd-perform-similarly-by-race

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