心不全(HF)関連の死亡率は、1999年から2012年にかけて減少したが、2012年から2021年には上昇に転じ、完全に元の水準に戻ったとの研究報告が、「JAMA Cardiology」に4月24日掲載された。アインシャムス大学(エジプト)のAhmed Sayed氏らは、米疾病対策センターのWide-Ranging Online Data for Epidemiological Research(CDC WONDER)のデータを分析。HF関連死亡率について、人口10万人当たりの年齢調整死亡率(AAMR)とその年変化率(APC)を算出し、経時的な変化を調べた。また、年齢、性別、人種・民族、都市化度、国勢調査地域で層別化したサブグループ間で、こうしたAAMRとAPCの変化を比較した。死亡率の推定にあたっては、モンテカルロシミュレーションを用いて100 万回の反復処理を行い、多変量t分布からのパラメータ推定値サンプリングにより95%信頼区間(CI)を算出した。その結果、HF関連死亡率は、1999~2005年にはAPC-1.62%(95%CI-2.15〜-1.09%)、2005~2009年には-3.29%(同-4.84〜-1.71%)で減少し、2009~2012年には-0.95%(同-4.11~2.32%)で横ばいとなった。しかしその後、HF関連死亡率は2012~2019年にはAPC1.82%(同1.30~2.34%)で上昇に転じ、2020~2021年には7.06%(同4.24~9.96%)とさらに急増した。2012~2021年に生じたHF関連死亡率の上昇は、それ以前の減少よりも大きいものであり、その逆転の大きさの比率(逆転率)は103.2%(95%CI 101.1~105.3%)であった。こうした逆転は全てのサブグループで認められたが、その大きさには差が見られた。特に逆転率が大きかったのは、45歳未満(906.3%)、45~64歳(384.7%)、男性(119.0%)、非ヒスパニック系黒人(166.5%)、地方に住む人(92.3%)であった。著者らは「HFを呈しやすい素因(虚血性心疾患など)を持つ患者の生存期間が長くなるほど、HFの有病率が上昇し、それによって観察されるHF死亡率は上昇する可能性がある」と述べている。なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年4月26日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/gains-in-heart-failure-mortality-have-been-erasedCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock