加齢黄斑変性の経過観察における在宅自己検査の有用性は限定的

加齢黄斑変性の経過観察における在宅自己検査の有用性は限定的

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新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)の治療後の経過観察において、患者自身が在宅で行う視力などのモニタリングツールの有用性は、限られたものであることを示唆するデータが報告された。英クイーンズ大学ベルファストのRuth E. Hogg氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に4月25日掲載された。評価した3種類のツールは全て、疾患活動性の再燃を捉えるには判定精度が不十分だったという。

nAMDの多くは血管内皮増殖因子阻害薬(抗VEGF薬)の硝子体内投与により病勢コントロールが可能だが、治療後に新生血管の活動性が再燃することが少なくない。再燃時には抗VEGF薬を適切なタイミングで再投与する必要があるため、治療後にも長期の経過観察が必要とされる。長期間の定期的な通院や検査は患者、医療者の双方にとって負担となることから、患者が自宅で視力などをモニタリングして異常を検出することを意図した、いくつかのツールが提案されている。Hogg氏らは、これらの自己モニタリングツールがどの程度nAMD再燃の把握に役立つかを検討した。

研究参加者は英国内の医療機関6施設から募集された、年齢が50歳以上で経過観察中のnAMD患者297人(平均年齢74.9±6.6歳、女性58.6%)。全員が参加登録の6カ月以上(最大42カ月)前までに、抗VEGF薬による治療を受けていた。このうち259人の312眼に対して、治療後に少なくとも1回の光干渉断層撮影(OCT)等の検査が施行され、疾患活動性が詳細に評価されていた。OCT等の施行件数は合計1,549件で、疾患の活動性ありが932件(60.1%)、活動性なしが576件(37.2%)、不明が40件(2.6%)、病変なしが1件(0.1%)だった。

有用性を評価した自己モニタリングツールは、国際黄斑・網膜財団による「Keep Sight Journal(KSJ)」という紙ベースのツールが1種、そのほかにモバイルアプリケーションツールが2種の計3種類で、視力や歪視、視野感度低下などの評価機能を有する。モバイルアプリについては測定の都度、データが自動送信されて状態が判定され、KSJについては患者自身が記録した用紙を回収し、半年ごとに研究者が状態を判定した。これらによる自己モニタリングは、1カ月当たり中央値3回(四分位範囲1~4)の頻度で行われていた。

ROC解析の結果、OCTで把握された活動性再燃の判定能(AUC)は3種類とも0.6未満であり、満足のいく精度は示されなかった。唯一、KSJの視力の評価指標がベースラインより低下していた患者は、視力が維持または改善していた患者に比べて、活動性再燃のオッズ比が高いという関係のみが有意だった〔OR3.48(95%信頼区間1.09~11.13)、P=0.04〕。

著者らは、「これらの自己モニタリングツールのみでは、nAMDの活動性再燃の多くが見逃されて治療機会を逃し、回避可能な視力喪失のリスクが生じてしまう」と述べている。なお、一部の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年4月29日) 

https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/home-vision-tests-offer-limited-diagnostic-accuracy-for-neovascular-amd

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