高齢発症てんかん(LOE)の原因は多岐にわたり、原因を特定できないケースも少なくないが、小規模な先行研究からは、睡眠時無呼吸と原因不明のLOEとの関連が示されている。米ジョンズ・ホプキンス大学のChristopher M. Carosella氏らは、動脈硬化リスク因子に関する一般住民対象大規模疫学研究「ARIC研究」のデータを用いてこの点を縦断的に検討。論文が「SLEEP」に2023年9月6日掲載された。
ARIC研究は1987~1989年に45~64歳の地域住民1万5,792人を登録し、現在も追跡を継続中。参加者の一部は1995~1998年に動脈硬化リスク因子として、自宅での睡眠ポリグラフ検査による睡眠関連指標も評価されていた。今回の研究ではそのデータのある1,309人を解析対象とし、2018年まで追跡。67歳の誕生日以降のてんかんの新規診断例をLOEと定義して、睡眠関連指標との関係性を解析した。
中央値20年の追跡で26人がLOEを発症。交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、教育歴、糖尿病・高血圧・脳卒中・認知症・頭部外傷の既往、APOE4遺伝子型、肺機能など)で調整後、睡眠中に酸素飽和度が80%未満に低下した記録のある158人(12.1%)は、死亡を競合リスクとして考慮したLOE発症サブハザード比(SHR)が3.28(95%信頼区間1.18~9.08)となった。
脳卒中や認知症患者を除外した感度分析でもSHR3.21(同1.05~9.77)と有意なリスク上昇が認められた。また、記録されていた酸素飽和度の最低値が低いほどLOEリスクが上昇するという、用量依存関係も確認された。なお、無呼吸低呼吸指数(AHI)は、LOE発症と有意な関連が見られなかった〔AHI異常値の記録がある場合のSHR0.997(同0.46~2.12)〕。
次に、2011~2013年に実施した5回目の追跡調査(対象はARIC参加者全員で、この時点の年齢範囲は66~90歳)において、医師から閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と診断された経験の有無を質問。2,672人のうち313人(11.7%)がOSAと診断されていた。5回目の追跡調査以降、新たに39人がLOEを発症し、前記同様の交絡因子を調整後、OSAと診断されていた群のSHRは2.59(同1.24~5.39)となった。
Carosella氏らは、「中年期後期に睡眠時無呼吸を有すること、および睡眠中の酸素飽和度がより低いことは、高血圧やその他の併存疾患の有無とはかかわりなくLOEの発症と関係しており、これらはLOEの修正可能な潜在的リスク因子である可能性がある。この知見は今後、LOEの臨床に多大な影響を及ぼすかもしれない」と述べている。
なお、1人の著者が製薬および出版企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年5月2日)
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