心血管リスク因子と心血管疾患の有病率は2050年まで上昇傾向

心血管リスク因子と心血管疾患の有病率は2050年まで上昇傾向
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心血管リスク因子と心血管疾患の有病率は2050年まで上昇し、それに伴う経済的負担も大幅に増加すると予測されることが、「Circulation」に6月4日掲載された2件の研究結果により明らかになった。

米ワシントン大学医学部のKaren E. Joynt Maddox氏らは、2015~2020年の米国民健康栄養調査(NHANES)と2015~2019年の米医療費パネル調査(MEPS)のデータを用いて、心血管リスク因子と臨床的な心血管疾患および脳卒中の有病率の傾向を推定した。さらに、人口動態の変化を考慮して、2050年までの予測値を算出した。

その結果、2020年から2050年にかけて、心血管リスク因子の有病率は、高血圧(51.2%から61.0%)、糖尿病(16.3%から26.8%)、肥満(43.1%から60.6%)で上昇し、高コレステロール血症(45.8%から24.0%)で減少すると推定された。心血管疾患の有病率は、冠動脈疾患(7.8%から9.2%)、心不全(2.7%から3.8%)、脳卒中(3.9%から6.4%)、心房細動(1.7%から2.4%)、心血管疾患全体(11.3%から15.0%)で上昇すると予測された。2050年には、臨床的な心血管疾患は4500万人の成人に影響を及ぼし、高血圧を含めると1億8400万人以上に影響が広がることが示された。

米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのDhruv S. Kazi氏らは、主要な心血管リスク因子(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症)と心血管疾患(冠動脈性心疾患、心不全、脳卒中、心房細動など)に起因する費用について、2050年まで予測した。まず、2015~2019年のMEPSのデータを用いてベースライン時の医療費を算出し、さらに治療に要する時間や障害で働けない時間、早期死亡がもたらす生産性の損失を算出。議会予算局の想定からインフレ調整後の医療費の年間上昇率を1.91%、生産性の損失の年間上昇率を0.8%と仮定し、2050年までの費用を予測した。これに各疾患の2020~2050年の予測患者数を掛け合わせ、米国全体での費用を集計した。

解析の結果、2020年には、米国成人の約35%が心血管リスク因子または心血管疾患の治療を受けていた。各疾患の患者1人年当たりにかかる医療費の平均値は、高血圧2,500ドル、糖尿病7,300ドル、高コレステロール血症1,200ドル、冠動脈性心疾患1万3,000ドル、脳卒中3万5,000ドル、心不全1万8,000ドルなどと推定された。インフレ調整後、3つの心血管リスク因子による年間医療費は2020年の4000億ドルから2050年には1兆3440億ドルへと3倍近くに増大することが予測された。心血管疾患の年間医療費はほぼ4倍(3930億ドルから1兆4900億ドル)、生産性の損失は1.54倍(2340億ドルから3610億ドル)になると予測された。

Kazi氏は声明で、「心血管リスク因子と心血管疾患の大幅な増加が、かなりの経済的負担をもたらすことは驚くべきことではない。心血管疾患に関わる費用は2050年までに1兆8000億ドルに達すると予測される」と述べている。

なお、Joynt Maddox氏らの研究の著者2人と査読者1人、Kazi氏らの研究の著者1人と査読者1人が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2024年6月6日)

https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/prevalence-of-cardiovascular-risk-factors-diseases-set-to-increase

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