いくつかの環境ストレス因子は心血管リスクの上昇と関連

いくつかの環境ストレス因子は心血管リスクの上昇と関連
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気候変動に関連するいくつかの環境ストレス因子が心血管リスクの上昇と関連していることが、「JAMA Cardiology」に6月12日掲載のシステマティックレビューで明らかになった。

米Beth Israel Deaconess Medical CenterのDhruv S. Kazi氏らは、気候変動に関連する環境ストレス因子と心血管系の有害転帰との関連に関する現在のエビデンスの評価を行った。まず、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryを用いて、1970年1月から2023年11月15日の間に発表された、気候変動関連環境ストレス因子への曝露と心血管関連の死亡、急性心血管イベント、およびそれに関連する医療利用との関連を評価した査読済み論文を検索し、基準を満たした492件の観察研究を特定した。これらの研究のうちの182件は極端な気温、210件は地上オゾン、45件は山火事の煙、63件はハリケーンや砂嵐、干ばつなどの極端な気象現象に関するものだった。研究対象国は、高所得国が30カ国、中所得国が17カ国、低所得国が1カ国だった。研究の質は、ナビゲーションガイド(Navigation Guide)と呼ばれるシステマティックレビューのフレームワークを用いて評価された。それぞれの研究デザインには大きな違いがあったため、定量的なメタアナリシスは行わず、結果を質的に統合した。

エビデンスの質は、極端な気温、ハリケーン、砂嵐については「高」、地上オゾンと山火事の煙については「中」、その他の環境ストレス因子への曝露については「低」と評価された。また、エビデンスの強さは、極端な気温、地上オゾン、ハリケーン、砂嵐については「十分」、山火事の煙については「限定的」、洪水、干ばつ、土石流については「不十分」と評価された。

極端な熱曝露について検討した研究の86%(87/101件)が、心血管関連死亡率の上昇との関連を報告していた。また、熱波(典型的には高温が2日以上継続する状態と定義)について検討した研究の86%(24/28件)も、心血管関連死亡率の上昇との関連を報告していた。一方、極端な寒さとの関連については、82%(49/60件)の研究で寒冷曝露と心血管関連死亡率との関連が示されていたが、リスク増加は3%から172%までと幅が大きかった。

気温の上昇に伴う地上オゾン濃度の上昇について検討した研究の62%(44/71件)でも、心血管疾患による死亡との関連が報告されていた。一方、心血管疾患罹患との関連についての結果は一貫しておらず、57%(82/143件)はリスク増加、36%(51/143件)はリスクに変化なし、7%(10/143件)は逆にリスク低下を報告していた。地上オゾンと気温が有害な心血管イベントに及ぼす影響を検討した研究の69%(11/16件)では両者の間に正の相関が認められたことを報告していた。

このほか、いくつかの研究では、ハリケーンなどの極端な気象現象は、発生後、数カ月にわたる心血管リスクの増加と関連することや、山火事の煙への曝露後に心血管疾患による死亡率、院外心停止の発生、および脳梗塞による入院がわずかに増加することが報告されていた。総じて、高齢者、人種/民族的マイノリティに属する人、低所得コミュニティに属する人は特に影響を受けやすいことが示唆された。

著者らは、「心血管系の健康を継続的に向上させるためには、特に影響を受けやすい集団において、気候変動に関連した心血管疾患リスクを低減させるための費用対効果の高い介入策を特定し、実施することが喫緊に必要とされている」と述べている。

なお、著者の1人が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年6月13日)

https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/some-environmental-stressors-linked-to-increased-cardiovascular-risk

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