在胎週数35〜42週で生まれた活気のない(nonvigorous)新生児に対し行われる、臍帯の早期結紮(early cord clamping;ECC、60秒までに結紮)と臍帯ミルキング(umbilical cord milking;UCM、20秒で4回ミルキング)とについて長期予後を比較したところ、有意差はなかったことが、「JAMA Network Open」に7月1日発表された論文で明らかにされた。
米Sharp Mary Birch Hospital for Women & NewbornsのAnup C. Katheria氏らは、米国、カナダ、およびポーランドの10カ所の医療センターで2019年1月5日から2021年6月1日の間に実施されたクラスターランダム化比較試験(RCT)のデータの二次解析を行い、生後2歳過ぎまでの長期予後を検討した。このRCTでは、在胎週数35〜42週で生まれた活気のない(生後15秒で筋緊張低下/皮膚色チアノーゼ/無呼吸;先天性の大奇形・染色体異常などを除く)新生児1,730人を対象に、UCMにより新生児集中治療室(NICU)入室リスクが低下するのかがECCとの比較で検討された。追跡調査は2023年9月26日まで行われた。
本研究では、最初の研究で生存退院し、長期追跡に同意した1,206人のうち、「2歳時のASQ-3(Ages and Stages Questionnaires, 3rd Edition)スコアが判明しているか2歳前に死亡した」971人を対象とした(UCM502人、ECC469人)。このうち「2歳時のM-CHAT-R/F(Modified Checklist for Autism in Toddlers, Revised/Follow-Up)スコアが判明しているか2歳前に死亡した」者は927人いた(UCM486人、ECC441人)。主要評価項目は、生後22〜26カ月時のASQ-3のスコアと、M-CHAT-R/Fでリスクが中〜高と判定された割合とした。ASQ-3はそれぞれ6つの質問から成る5つのサブドメイン(意思疎通、粗大運動、微細運動、問題解決、個人-社会)で構成されている。各サブドメインは最高60点でスコアが計算され(総スコアは最高300点)、高スコアほど発達マイルストーンの達成度が高い。M-CHAT-R/Fは0〜20点で評価され、0〜2点は「低」、3〜7点は「中」、8〜20点は「高」リスクと判定される。
ECC群とUCM群の間で、母体および新生児の特性(人種、年齢、学歴、併存疾患など)に大差はなかった。ASQ-3総スコアの中央値(四分位範囲)はUCM群で255点(225〜280)点、ECC群で255(230〜280)点であり(P=0.87)、一般化線形混合モデルによる解析でも、両群間に有意差を認めなかった(最小二乗平均差−0.49、95%信頼区間〔CI〕−6.36〜5.37)。ASQ-3の5つのサブドメインについても、その中央値は全て同じで、有意差はなかった。M-CHAT-R/Fスコアが中〜高リスクである対象者の割合も、UCM群で9%(45/486人)点、ECC群で8%(37/441人)であり(P=0.86)、有意差を認めなかった(オッズ比1.08、95%CI 0.45〜2.59)。
著者らは、「最初の分析でUCMが胎盤輸血を増加させることが判明し、短期的には大いに有益であることが分かっていた。今回の分析で、安全で簡便、かつ費用もかからないUCMを、ECCよりも好ましい手段として実施すべき根拠がさらに強くなった」と述べている。(HealthDay News 2024年7月9日)
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