心血管疾患(CVD)エピソードによる入院後に食事カウンセリングが記録される頻度は低いことが、「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」7月号に掲載された論文で明らかにされた。
米ミシガン大学アナーバー校のEric J. Brand氏らは、複数の保険会社の請求データを集約するレジストリとしてMichigan Value Collaborative(MVC)が運営しているレジストリデータ(2015年10月〜2020年2月)を用いて、CVDイベント(冠動脈バイパス術〔CABG〕、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、経皮的冠動脈インターベンション〔PCI〕)による入院後90日以内に実施された食事カウンセリングの記録に対する保険請求の頻度を調査した。食事カウンセリングの記録は、受診(encounter)の際に記録されたICD-10(国際疾病分類第10版)のコードやCPT(Current Procedural Terminology、現行医療行為用語)コード、心臓リハビリテーション(CR)コード、医療従事者によるケアマネジメントコードにより確認された。多変量ロジスティック回帰分析により、年齢、性別、慢性腎臓病、糖尿病、肥満、病院の立地(大都市部か非大都市部)、CVDイベント、および保険会社が、食事カウンセリングの記録のばらつきに与える影響を検討した。
対象期間内に、14万6,185人の患者における17万5,631件のケアエピソード(うっ血性心不全47.1%、急性心筋梗塞28.7%、PCI 17.0%、CABG 7.3%)が確認された。これらのエピソードの71.9%(12万6,352件)は65歳以上の高齢者に、55.8%(9万7,978件)は男性に生じたものだった。入院後90日以内の食事カウンセリングについては、全エピソードケアの22.8%(4万111件)に記録が残されており、CRコードでの記載が、ICDやCPTコードでの記載よりも多かった(CRコード:18.6%〔3万2,755件〕、ICD/CPTコード:5.1%〔9,034件〕)。
多変量ロジスティック回帰分析からは、食事カウンセリングが記録されるオッズは、65歳以上(オッズ比〔OR〕0.77、95%信頼区間0.74〜0.79、P<0.001)、女性(同0.83、0.81〜0.85、P<0.001)、慢性腎臓病(同0.74、0.71〜0.77、P<0.001)、糖尿病(同0.95、0.93〜0.97、P<0.001)の患者で低く、肥満(同1.28、1.23〜1.32、P<0.001)、および非大都市部の病院(同1.31、1.26〜1.36、P<0.001)の患者で高いことが示された。また、CABGと比べて、急性心筋梗塞(同0.29、0.27〜0.30、P<0.001)、うっ血性心不全(同0.12、0.11〜0.12、P<0.001)、PCI(同0.36、0.35〜0.38、P<0.001)のエピソードでは、食事カウンセリングが記録されるオッズが低かった。
さらに、食事カウンセリングが記録されるオッズは、従来のメディケアと比べて、メディケイドおよびメディケア・アドバンテージの健康維持機構プランでは低い一方で、民間保険やメディケア・アドバンテージの優先提供機関プラン、および民間保険の健康維持機構プランでは高いことも示された。本研究で得られたこれらの結果を黒人と白人で比較したが、食事カウンセリングが記録されるオッズは同様であった。
著者らは、「ライフスタイルの是正がCVDに大きな影響を及ぼし得ることに鑑みると、CVDイベントリスクの高い患者が疾患特異的な食事カウンセリングを受ける頻度を増加させるための継続的な取り組みが必要だ」と述べている。
なお、1人の著者が、New Amsterdam Pharmaceuticals社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年6月18日)
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