抑うつ症状の悪化と記憶力の低下との間に双方向の関連

抑うつ症状の悪化と記憶力の低下との間に双方向の関連
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50歳以上の成人において、抑うつ症状の悪化は記憶力の低下と双方向の関連を有するとする研究結果が、「JAMA Network Open」に6月11日掲載された。

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJiamin Yin氏らは、英国加齢縦断研究(English Longitudinal Study of Aging;ELSA)のデータを用いて、抑うつ症状と認知機能との間に双方向の関連があるかを検討した。対象として抽出された50歳以上の成人8,268人(ベースライン時の平均年齢64歳、女性55%)は、ベースラインとして設定された2002〜2003年から2018〜2019年までの16年の間に隔年で最大9回の追跡調査を受けていた。認知機能として記憶力と言語流暢性を採用し、前者はリコールテスト(互いに無関係な10個の単語の想起)、後者はアニマルネーミングテスト(動物名を1分間で可能な限り言わせる)で評価した。抑うつ症状は、面接に先立つ1週間の症状が8項目版The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)で評価し、該当しないを0点、該当するを1点として合計スコアを算出した(0〜8点、高スコアほど重症)。

2変数のdual change score modelを用いて、ベースライン時の抑うつ症状と認知機能の間の横断的な関連を検討し、また追跡期間中において両者の変化とそれが互いに及ぼす影響について検討した。抑うつ症状の直線的な傾きと認知機能の2次関数としての傾き、および認知機能の直線的な傾きと抑うつ症状の2次関数としての傾きとの関係を見た。

抑うつ症状を曝露因子、記憶力をアウトカムとして分析した結果、抑うつ症状の重症度は、ベースライン時の記憶力(β切片−0.018、標準偏差〔SE〕0.004、P<0.001)、および記憶力の変化の直線的な傾き(同−0.146、0.023、P<0.001)と負の関連を示した。また、抑うつ症状の重症度の変化の直線的な傾きは、記憶力の変化の2次関数としての傾きと有意な負の関連を示した(β quadratic −0.253、SE 0.079、P=0.001)。次に、記憶力を曝露因子、抑うつ症状をアウトカムとして分析したところ、記憶力の変化の直線的な傾きは、抑うつ症状の重症度の変化の2次関数としての傾きとの間に有意な関連を認めた(同0.016、0.006、P=0.005)。

一方、抑うつ症状の重症度とベースライン時の言語流暢性との間に負の関連は認められたものの(β切片−0.009、SE 0.004、P=0.02)、抑うつ症状を曝露因子とした際の言語流暢性の変化の直線的な傾きや2次関数としての傾きとの関連は有意ではなかった。抑うつ症状をアウトカムとした際も言語流暢性の経時的変化との関連は見られなかった。

著者らは、「今回の研究は、抑うつ症状と記憶力低下の間に存在する複雑な相互作用を明らかにしたものであり、臨床の場においては患者の評価と治療アプローチを包括的に行うべきことの重要性を示すものだ。その後の人生における記憶力低下を遅らせるためには、抑うつ症状に対して早期に介入することこそが、時宜を得た対処法と言えるだろう」述べている。(HealthDay News 2024年6月13日)

https://www.healthday.com/healthpro-news/mental-health/bidirectional-link-idd-for-change-in-depressive-symptoms-memory-change

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