Ⅰ度高血圧(収縮期血圧が130〜139mmHg、または拡張期血圧が80〜89mmHg)の成人において、米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)が2023年に公表した心血管疾患(CVD)の新たなリスク評価ツールであるPredicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)計算式により推定された10年間のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクは、それ以前(2013年)に開発された同様のリスク評価ツールであるPooled Cohort Equations(PCE)により推定されたリスクの約半分であるという研究結果が、「Hypertension」9月号に掲載された。
米アラバマ大学バーミンガム校のPaul Muntner氏らは、2013年から2020年までの米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて、Ⅰ度高血圧を有し、自己申告によるCVDの既往がない30~79歳の成人1,703人(平均年齢49.6歳、男性55.0%)を対象に、10年間のASCVD発症リスクをPCEおよびPREVENT計算式により算出した。PREVENT計算式では、あらゆるCVDの発症リスクも算出した。各評価ツールで予測されたリスクは、「5%未満」「5〜10%未満」「10〜15%未満」「15%以上」で分類し、それぞれに該当する対象者の割合を推定した。さらに、1)PCEおよびPREVENT計算式のいずれによる評価でも高リスクではない、2)PCEによる評価では高リスク、PREVENT計算式による評価では高リスクではない、3)PREVENT計算式による評価では高リスク、PCEによる評価では高リスクではない、4)PCEおよびPREVENT計算式のいずれによる評価でも高リスク、に該当する者の割合も推定した。高リスクは、2017年ACC/AHA高血圧ガイドラインに基づき10%以上の場合と定義した。
その結果、10年間のASCVDリスクの平均値は、PCEによる評価では5.4%(95%信頼区間〔CI〕5.0〜5.9%)、PREVENT計算式による評価では2.9%(同2.7〜3.1%)であった。10年間のASCVDリスクが「10~15%未満」と「15%以上」に該当する対象者の割合は、PCEによる評価ではそれぞれ8.1%と7.8%、PREVENT計算式による評価ではそれぞれ3.0%と0.3%であった。10年間のASCVDリスクについて、PREVENT計算式による評価で10%以上かつPCEによる評価で10%未満の者はいなかったが、PCEによる評価で10%以上かつPREVENT計算式による評価でも10%以上だった者の割合は3.4%であったのに対し、PCEによる評価で10%以上かつPREVENT計算式による評価で10%未満の者の割合は12.5%に上った。PCEで評価した10年間のASCVDリスクの平均値と比較して、PREVENT計算式で評価した10年間のあらゆるCVDリスクの平均値(4.5%、95%CI 4.1〜4.8%)の方が低かった。
著者らは、Ⅰ度高血圧の米国成人において、PREVENT計算式により評価された10年間のASCVDリスクは、PCEにより評価されたリスクのおよそ半分であった」と述べ、「PCEではなくPREVENT計算式で10年間のASCVDリスクを推定した場合、Ⅰ度高血圧の米国成人の多くは、降圧薬による治療の開始を推奨されない可能性がある」と述べている。
なお、著者の1人は、患者啓発事業を行うMedExplain社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年7月15日)
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