乳幼児期から住居が不安定である状態が続くと、思春期に身体的・精神的な健康が良好なものでなくなることが、「Pediatrics」に7月1日掲載された論文で明らかにされた。
ニューヨーク大学グロスマン医科大学院のKristyn A. Pierce氏らは、Future of Families and Child Wellbeing Studyのデータを用いて、住居の不安定性として設定した5つの指標のうち該当するものの数に基づき、住居の不安定性を0(安全)から5(高度の不安定性)で評価する複合尺度を作成した。5つの指標とは、1)家賃や住宅ローンの支払いの滞納、2)別の家族と住居を共有している、3)立ち退き、4)ホームレス(過去1年間に1夜以上、シェルター、車、廃屋、または居住に適さない所で過ごした経験を有する)、5)前回の調査の時点から、時期を問わず1回以上の引っ越しを経験、であった。この複合尺度を用いて、対象とした4,714人の1・3・5・9・15歳時の住居の不安定性を評価した。その上で、グループベースの軌道モデリングを用いて、住居の不安定性のパターンを分類した。そしてこれらのパターンと15歳時の心身の健康状態(自己申告による全般的な健康、抑うつおよび不安の症状)との関連について調べた。全般的健康状態は「極めて悪い」から「極めて良好」までの5段階の質問1つに回答させてロジスティック回帰モデルで、抑うつ症状はCES-D(抑うつ性自己評価尺度)に回答させて負の二項回帰モデルで、不安症状はBrief Symptom Inventory 18, Anxiety Subscaleから修正の上、採用した6つの質問に回答させてポワソン回帰モデルで、それぞれ検討した。
その結果、幼児期(1歳)から思春期(15歳)にかけての住居の不安定性の推移のパターンは、「安定」、「間欠的に不安定〜中等度に不安定(以下、中等度不安定)」、「高度に不安定(以下、高度不安定)」の3つに分類できた。安定群(2,230人)に比べ、中等度不安定群(2,188人)および高度不安定群(296人)では、全般的健康状態が「極めて良好」「良好」である調整オッズ比が、それぞれ0.81(95%信頼区間〔CI〕0.69〜0.95)、0.67(同0.50〜0.92)と有意に低かった。また、安定群に比べ、中等度不安定群と高度不安定群では、抑うつ症状の調整発生率比がそれぞれ1.05(95%CI 1.03〜1.08)、1.14(同1.08〜1.20)と有意に高かった。さらに、高度不安定群は不安の調整発生率比も1.06(同1.01〜1.11)と有意に高かった。
著者らは、「住居の不安定性は回避できるものであり、また政策や公衆衛生の介入による対処も可能である。今後求められるのは、住居の不安定性について広く使えるような尺度を作成・確立し、スクリーニングを行った上、幼児を持つ家族が適切なサービスを受けられるよう、関連する諸手続きを進めることであろう」と述べている。(HealthDay News 2024年7月1日)
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