スマートフォン(以下、スマホ)のカメラで撮影した子どもの目の写真を基に、人工知能(AI)を使って眼疾患を検出できるとする研究結果が報告された。上海交通大学(中国)のQin Shu氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に8月6日掲載された。
視機能の正常な発達のためには、斜視や近視などの子どもに多い眼疾患を早期発見することが重要だが、従来のスクリーニング法は主として眼科医等の診察に依存しており、時間とコストを伴う。一方で近年、医療の多くの領域にAIが活用されるようになり、眼科領域でも眼底写真から異常所見を検出するなどの実用性が報告されている。またカメラ付きのスマホは既に広く普及している。これらを背景にShu氏らは、スマホの写真のみからAIによって子どもの眼疾患を検出するモデルの構築を試みた。
モデル構築のためのデータは、2022年10月~2023年9月に上海第九人民病院眼科を受診した18歳以下の患者476人から得た。このうち女性が47.27%であり、年齢は5歳以下が19.75%、6~12歳が62.82%、13~18歳が17.23%だった。計1,419枚のスマホで撮影された目の写真が、ディープラーニングに用いられた。これらの写真のうち946枚は単眼の画像であり、近視と眼瞼下垂の識別に使用され、473枚の両眼画像は斜視の識別に使用された。構築されたモデルの疾患検出力は、以下のとおりだった。
近視については、感度0.84(95%信頼区間0.82~0.87)、特異度0.76(同0.73~0.80)、AUC0.84(0.83~0.85)。斜視については、感度0.73(0.70~0.77)、特異度0.85(0.84~0.86)、AUC0.83(0.82~0.85)。眼瞼下垂については、感度0.85(0.82~0.87)、特異度0.95(0.93~0.97)、AUC0.94(0.93~0.96)。
性別ごとに検討した場合も、女性と男性の双方で、近視、斜視、眼瞼下垂の検出に同等のパフォーマンスが示された。それに対して年齢層別に検討すると、近視については6〜12歳および13〜18歳では良好な感度が示されたが(ともに約0.85)、0〜5歳では感度0.69とやや低かった。斜視については、13〜18歳で感度0.78と最も高く、0〜5歳では0.67と最も低かった。眼瞼下垂については年齢層による感度の差は認められなかった。
Shu氏らは、「AIモデルは、スマホの写真のみで、子どもの近視、斜視、眼瞼下垂を正確に検出する優れたパフォーマンスを示した。このモデルは、家族が子どもの眼疾患を見つけ出すことをサポートし、診断と治療の遅れによる視機能への深刻な影響を軽減できるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2024年8月7日)
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