急性白血病の発症時点において、多彩な眼科所見が認められるとする、マンスーラ大学(エジプト)のDina N. Laimon氏らの論文が「Annals of Hematology」に7月10日掲載された。特に、網膜出血やロート斑が高頻度に認められるという。
白血病では、白血病細胞による眼組織の直接浸潤、血球減少や白血球増多などの血液学的異常、あるいは化学療法や免疫抑制療法により、眼球およびその付属器に多彩な所見が現れるが、そういった所見の出現率に関するデータは少ない。Laimon氏らは2022年1月~2023年2月に、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)と新規診断された患者の眼科所見の出現率を詳細に検討した。
解析対象患者数は222人で平均年齢が43.45±17.35歳、男性61.7%であり、AMLが144人(64.9%)、ALLが78人(35.1%)だった。研究登録以前から眼疾患のある患者は除外されている。
全体で96人(43.2%)に眼科所見が認められ、そのうち4人(1.8%)は視力を喪失していた。出現率の高い所見は網膜出血(19.8%)とロート斑(17.1%)であり、そのほかに、眼瞼腫脹(4.1%)、眼瞼の斑状出血(3.2%)、眼瞼下垂(1.8%)、兎眼(0.5%)、結膜下出血(5.9%)、結膜浮腫(0.9%)、網膜静脈のうっ血・蛇行(4.1%)、網膜前出血(3.2%)、硝子体出血(3.2%)、黄斑症(2.3%)、網膜浸潤(1.8%)、滲出性網膜剥離(1.8%)、軟性白斑(0.9%)、網膜静脈閉塞(0.5%)、乳頭浮腫(2.8%)、視神経乳頭浸潤(1.8%)、視神経乳頭蒼白(1.8%)、眼窩病変(3.2%)、眼球運動障害(1.4%)などが認められた。
AMLとALLを比較した場合、何らかの所見を有する割合はAMLの方が高く(50.0対30.8%〔P=0.028〕)、所見別に見ても、網膜出血(25.7対9.0%〔P=0.003〕)、ロート斑(20.8対10.3%〔P=0.046〕)の出現率に有意差があった。
眼科所見と血液学的パラメータとの関連を検討すると、網膜出血はヘモグロビン低値(P=0.021)や中枢神経浸潤発生率の低下(P=0.021)と関連しており、また予後リスクが中リスクまたは高リスクの患者が多かった(P=0.002)。眼瞼の斑状出血は中枢神経浸潤(P=0.045)と関連しており、網膜浸潤(P=0.006)や滲出性網膜剥離(P=0.001)は芽球割合が高いことと関連していた。その一方、眼瞼下垂は芽球割合の低さと関連していた(P=0.04)。
Laimon氏らは、「血液がん患者の眼病変の検出や管理において、眼科医と血液腫瘍医の協力が極めて重要である。また、これらの患者の予後、特に生命予後との関連を明らかにするため、より大規模なコホートでの研究が求められる」と述べている。(HealthDay News 2024年7月17日)
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