性的マイノリティーとジェンダーマイノリティー(sexual and gender minority;SGM)の成人のてんかんリスクを検討した、米ジョンズ・ホプキンス大学のEmily L. Johnson氏らによる論文が、「JAMA Neurology」に7月22日掲載された。性的マイノリティー(ゲイ、レズビアン、バイセクシャルなど)は、健康状態が不良な傾向があり死亡率が高いことが報告されている。また、ジェンダーマイノリティー(出生時に割り当てられた性と性自認の不一致など)は、健康関連の生活の質が低いとの報告がある。しかし、それらの人々におけるてんかんの有病率を、異性愛者やシスジェンダーと比較した研究はほとんどない。これを背景にJohnson氏らは、2022年の米国国民健康面接調査(NHIS)のデータを用いて、SGMの人々における活動性てんかんの有病率を推計した。この年のNHISでは、てんかんを有する場合の治療内容や発作頻度のほかに、性的指向や性自認に関しても調査されていた。解析対象の成人2万7,624人(平均年齢48.2±18.5歳、女性54%)における活動性てんかんの有病率は1.2%(95%信頼区間1.0~1.3)だった。活動性てんかんを有する群とそうでない群を比較すると、年齢層の分布は有意差がなかったが、前者は教育歴が短く世帯収入が低く、うつ病が多いという点で有意差が認められた。なお、活動性てんかんを有する群の64.7%は過去1年以内に発作を経験していなかったが、16.1%は過去1年以内に4回以上の発作を経験していた。SGMの割合は、性的マイノリティーが6.6%、ジェンダーマイノリティーが0.67%だった。てんかんの有無にかかわらず、SGM群は非SGM群と比較して若年層に多く分布していた。活動性てんかんの有病率は、SGM群が2.4%(同1.4~3.3)、非SGM群が1.1%(1.0~1.3)だった。年齢、人種/民族、世帯収入、教育歴の影響を調整後、SGM群の活動性てんかんの有病率は非SGM群の2倍以上であった(調整オッズ比〔aOR〕2.14〔1.35~3.37〕)。感度分析として行った、うつ病の既往歴を調整因子に追加した解析ではオッズ比が低下したが、群間差は引き続き有意だった(aOR1.61〔1.001~2.60〕)。Johnson氏らは、「SGMの人々は偏見や差別にさらされるリスクに加えて、健康状態の悪化リスクが高いことは既に知られている。そしてわれわれの研究結果は、SGMの人々はてんかんのリスクも高いことを示唆している」と総括している。また、SGMの人々のてんかんリスクが高いことの理由として、「複雑なメカニズムが関与していると考えられるが、この人たちに特有の心理社会的な要因、あるいは生物学的な要因が想定される」とした上で、「それ故にSGMの人たちは、保護された環境にある医療へのアクセスを必要としている」と述べている。(HealthDay News 2024年7月24日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/sexual-and-gender-minority-adults-have-higher-risk-of-epilepsyCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
性的マイノリティーとジェンダーマイノリティー(sexual and gender minority;SGM)の成人のてんかんリスクを検討した、米ジョンズ・ホプキンス大学のEmily L. Johnson氏らによる論文が、「JAMA Neurology」に7月22日掲載された。性的マイノリティー(ゲイ、レズビアン、バイセクシャルなど)は、健康状態が不良な傾向があり死亡率が高いことが報告されている。また、ジェンダーマイノリティー(出生時に割り当てられた性と性自認の不一致など)は、健康関連の生活の質が低いとの報告がある。しかし、それらの人々におけるてんかんの有病率を、異性愛者やシスジェンダーと比較した研究はほとんどない。これを背景にJohnson氏らは、2022年の米国国民健康面接調査(NHIS)のデータを用いて、SGMの人々における活動性てんかんの有病率を推計した。この年のNHISでは、てんかんを有する場合の治療内容や発作頻度のほかに、性的指向や性自認に関しても調査されていた。解析対象の成人2万7,624人(平均年齢48.2±18.5歳、女性54%)における活動性てんかんの有病率は1.2%(95%信頼区間1.0~1.3)だった。活動性てんかんを有する群とそうでない群を比較すると、年齢層の分布は有意差がなかったが、前者は教育歴が短く世帯収入が低く、うつ病が多いという点で有意差が認められた。なお、活動性てんかんを有する群の64.7%は過去1年以内に発作を経験していなかったが、16.1%は過去1年以内に4回以上の発作を経験していた。SGMの割合は、性的マイノリティーが6.6%、ジェンダーマイノリティーが0.67%だった。てんかんの有無にかかわらず、SGM群は非SGM群と比較して若年層に多く分布していた。活動性てんかんの有病率は、SGM群が2.4%(同1.4~3.3)、非SGM群が1.1%(1.0~1.3)だった。年齢、人種/民族、世帯収入、教育歴の影響を調整後、SGM群の活動性てんかんの有病率は非SGM群の2倍以上であった(調整オッズ比〔aOR〕2.14〔1.35~3.37〕)。感度分析として行った、うつ病の既往歴を調整因子に追加した解析ではオッズ比が低下したが、群間差は引き続き有意だった(aOR1.61〔1.001~2.60〕)。Johnson氏らは、「SGMの人々は偏見や差別にさらされるリスクに加えて、健康状態の悪化リスクが高いことは既に知られている。そしてわれわれの研究結果は、SGMの人々はてんかんのリスクも高いことを示唆している」と総括している。また、SGMの人々のてんかんリスクが高いことの理由として、「複雑なメカニズムが関与していると考えられるが、この人たちに特有の心理社会的な要因、あるいは生物学的な要因が想定される」とした上で、「それ故にSGMの人たちは、保護された環境にある医療へのアクセスを必要としている」と述べている。(HealthDay News 2024年7月24日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/sexual-and-gender-minority-adults-have-higher-risk-of-epilepsyCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock