てんかん発作を繰り返す患者では、発作中の低酸素血症によると思われる心筋症や心筋リモデリングを来すことがある。また、一部の抗てんかん薬は心筋細胞の電気的活動に影響を及ぼすことから、てんかん患者は急性心筋梗塞(AMI)リスクが高い可能性が想定される。ただしこれまでのところ、この点に関する研究は多くない。同済大学(中国)のZhemin Pan氏らは、米国最大規模の入院医療費データベース(National Inpatient Sample;NIS)を用いて、てんかん入院患者に占めるAMI診断件数の経時的推移や予後、リスク因子などを検討。結果の詳細が「Frontiers in Neurology」に8月5日掲載された。解析にはNISの2008~2017年のデータが用いられた。てんかんの記録のある18歳以上の入院患者は845万6,098人で、そのうち18万1,826人(2.15%)がAMI診断の記録もある入院だった。まず、てんかん入院患者に占めるAMI診断の推移を見ると、2008年には入院10万回当たり1,911.7件であったものが、2017年には同2,529.5件へと有意に増加していた(傾向性P<0.001)。年齢層や性別、人種、収入、加入している保険の種別などで層別化したサブグループ解析でも、全ての群でAMI診断の経時的な増加が認められた(いずれも傾向性P<0.05)。入院転帰については、AMI診断の記録のあるてんかん患者の院内死亡率が13.35%であり、その記録のないてんかん入院患者の院内死亡率は2.5%だった。交絡因子(年齢、性別、人種、収入、保険の種別、退院年、季節、併存疾患、医療機関の種別など)を調整後、院内死亡率のオッズ比(OR)が4.61(95%信頼区間4.54~4.69)であり、有意差が認められた。院内死亡以外の主な転帰(およびそのオッズ比〔95%信頼区間〕)については、急性心不全(3.51〔3.46~4.56〕)、急性呼吸不全(3.44〔3.40~3.47〕)、急性腎不全(2.19〔2.16~2.21〕)などのリスク上昇と関連していた。なお、AMI診断の記録のあるてんかん入院患者の院内死亡率を経時的に見ると、2008年は13.04%、2017年は12.50%であり、わずかに低下していた(傾向性P=0.0483)。AMIのリスク因子については、高齢(18~44歳に対して75歳以上はOR3.5〔3.45~3.62〕)、動脈硬化(4.44〔4.40~4.49〕)、心伝導障害(2.21〔2.17~2.26〕)、心筋症(2.11〔2.08~2.15〕)、凝固障害(1.52〔1.49~1.54〕)、脂質異常症(1.26〔1.24~1.27〕)、消化性潰瘍(1.23〔1.13~1.33〕)、慢性腎臓病(1.23〔1.22~1.25〕)、喫煙(1.20〔1.18~1.21〕)、体重減少(1.20〔1.18~1.22〕)などが特定された。Pan氏らは、「過去約10年でてんかん患者におけるAMI合併率が増加しており、彼らの死亡率は高い。てんかん患者のAMIリスクに対する早期介入の重要性が示唆される」と述べている。(HealthDay News 2024年9月18日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/acute-myocardial-infarction-up-in-people-with-epilepsy-2008-to-2017Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock