関節リウマチとAPO(妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症、胎児発育遅延、早産を含む)との間に双方向性の因果関係があることを示すエビデンスが蓄積されているが、その因果の方向についてはほとんど知られていない。そこで、Cheeloo College of Medicine at Shandong University(中国)のTongmin Chang氏らは、RAとAPOの潜在的な因果関係を解析する研究を行ったところ、RAが原因、APOが結果という因果関係が存在することが判明した。論文は、「BMC Pregnancy & Childbirth」に7月31日掲載された。
対象としたのは、RA患者群と対照群を比較した研究に参加した欧州人のコホート(IEU Open GWAS project;RA患者群1万4,361人、対照群4万3,923人)および東アジア人のコホート(中国のGWAS研究;RA患者群952人、対照群943人)。公開されているゲノムワイド関連研究のデータを用いて、双方向2標本メンデルランダム化(MR)解析を行った。操作変数(instrumental variable)とアウトカムとの関連に関するデータは、RAとAPOに関する2つのデータベース(IEUおよびFinnGen)から取得した。MRの一次解析には固定効果逆分散重み付け法を用い(異質性がある時はランダム効果分散重み付け法)、補助解析にはcML-MA-BICを用いた。感度分析には、MR-Egger法、MR-PRESSO法、Cochran Q 検定を適用し、結果の頑健性を確認した。
その結果、欧州人のコホートでは、RAリスク上昇は、妊娠高血圧症候群(オッズ比〔OR〕1.04、95%信頼区間〔CI〕1.02~1.06、P=9.89×10-5)、妊娠高血圧腎症(同1.06、1.01~1.11、P=6.47×10-5)、胎児発育遅延(同1.08、1.04~1.12、P=7.20×10-5)、早産(同1.04、1.01~1.07、P=0.001)と有意に関連していた。逆MR解析では、APOがRAと因果関係があることを示すエビデンスは得られなかった。また、東アジア人のコホートでは、RAとAPOの関連は認められず、異質性や水平多面発現は検出されなかった。
著者らは、「本研究により、欧州人では、RAが原因、APOが結果、という因果関係が存在することが遺伝学的に示された。この研究結果は、RAを有する妊婦に対しては、APOの予防を目的として妊娠早期から強力なケアや介入を行うべきであることを示している。ただし、本研究には限界があるため、さらなる研究が必要である」と述べている。(HealthDay News 2024年8月12日)
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