新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、世界中の医療に多大な影響を及ぼした。てんかんの臨床において、定期的な脳波検査のキャンセルを含む対面診療の制限が行われたが、その影響は非高所得国でより大きかった可能性がある。英East London NHS Foundation TrustのMichael J. Vasey氏らは、パンデミック初期に世界規模でのオンラインアンケートを行い、その実態を分析。「Epilepsia Open」に9月3日、論文が掲載された。
この調査はてんかん患者と医療従事者を対象とするもので、質問内容を英語のほか11の言語に翻訳し、2020年4月~2021年9月に回答が収集された。解析対象者数は、患者については53カ国の2,105人で、そのうち79%が高所得国(HIC)からの回答であり、医療従事者は26カ国の392人で、そのうち90%が非高所得国(非HIC)からの回答であった。なお、患者・医療従事者いずれの解析にも日本は含まれていない。
てんかん患者において、COVID-19罹患を報告した割合は、HIC、非HICいずれも7%だった。「パンデミック抑止のために取られた措置が健康状態に影響した」と回答した割合は、HICでは32%、非HICでは23%であり、前者が有意に高かった(P<0.001)。「てんかんの医療サポートを受けるのが困難」との回答は同順に28%、30%であり有意差はなかった(P=0.259)。
一方、医療従事者におけるCOVID-19罹患を報告した割合は、HICが6%であるのに対して非HICは18%であり、後者が有意に高かった(P=0.001)。また、感染への懸念、個人用防護具の不足、自身のメンタルヘルスへの影響という点で、非HICの医療従事者の方がより事態を深刻に捉えていた(全てP<0.001)。
てんかん診療の50%以上を電話で行っている割合は、パンデミック前はHICが7%、非HICは2%、パンデミック中は同順に70%、13%であり、また診療の50%以上をオンラインで行っている割合は、パンデミック前が、HIC、非HICの順に、2%、1%、パンデミック中は10%、11%であり、いずれも有意に増加していた(全てP<0.001)。
Vasey氏らは、「パンデミック初期には、てんかん患者のCOVID-19罹患率は比較的低かったが、特に非HICの医療従事者に大きな影響が生じていたと示唆される」と総括。また、「次に起こり得るパンデミックに備えるために、このような状況下での基本的なてんかん医療へのアクセス手段の確保、遠隔診療の強化、およびメンタルヘルスケア対策を優先事項とすべきだ」と付け加えている。
なお、複数の著者が製薬企業などとの利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2024年9月19日)
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