近年、「腸内細菌叢-腸-脳相関」に関する研究が急速に進み、腸内細菌叢の組成と精神神経疾患を含むさまざまな疾患のリスクとの関連や、腸内細菌をターゲットとする治療の有効性が示され始めている。ただし、てんかん患者の認知機能と腸内細菌叢との関連についての知見はほとんどない。福建医科大学附属泉州第一医院(中国)のBingCong Hong氏は、2020年12月~2022年12月に同院を受診したてんかん患者とその家族から糞便サンプルを採取し、てんかんの有無および認知機能障害の有無と腸内細菌叢の組成との関連を検討。その詳細が「Journal of Health, Population and Nutrition」に9月28日掲載された。この研究における患者群は国際抗てんかん連盟の定義に基づいててんかんと診断された患者100人であった。腸内細菌叢に影響を及ぼし得る併存症のある患者、過去6カ月以内に抗菌薬・高用量プロバイオティクス・消化器手術・消化管内視鏡検査などの投薬・治療を受けた患者、てんかんの手術やその他の頭蓋内手術の既往がある患者、過去3年以内にてんかんの食事療法歴がある患者、アルツハイマー病やパーキンソン病、うつ病などの神経疾患・精神疾患が併存する患者は除外された。平均年齢は26.94±6.21歳で、男性が54人であり、てんかん発症平均年齢は15.34±6.77歳だった。ミニメンタルステート検査(MMSE)に基づき、62人は認知機能障害を有すると判定された。一方、非てんかん群(対照群)はこの患者の家族100人で、41.66±6.87歳、男性41人だった。まず、患者群と対照群とを比較すると、全体としては腸内細菌叢の組成に有意な差が認められず、多様性に関するShannon指数などの4種類の指標の差はいずれも非有意だった。次に、てんかん患者の腸内細菌叢を認知機能障害の有無で比較。主座標分析の結果、重複はわずかであり、分布が大きく異なることが示された。傾向として、解糖系やヘテロ乳酸発酵を含む5つの代謝経路が、認知機能障害あり群で亢進していた。LEfSe解析(群間比較解析)では、Coriobacteriaceae科やCollinsellaを含む5つの細菌群が、認知機能障害のマーカーとして抽出された。ロジスティック回帰分析の結果、それらのうち特に、Collinsella(オッズ比〔OR〕1.828)、Oscillospirales目(OR1.815)、Ruminococcaceae科(OR1.511)が、認知機能障害を有するてんかん患者に特異性の高い腸内細菌と考えられた。Hong氏は、「てんかんに併発する認知機能障害の評価において、腸内細菌叢が重要なマーカーとなる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2024年10月16日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/gut-flora-differs-in-patients-with-epilepsy-and-cognitive-dysfunctionCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock