米デューク大学病院のAnnemarie Thompson氏らが、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)が2014年に発行した「非心臓手術患者の周術期の心血管疾患の評価および管理に関するガイドライン2014年版」を、2022年8月から2023年3月にかけて実施した新たなレビュー結果を踏まえて改訂し、「Circulation」および「Journal of the American College of Cardiology」に9月24日発表した。このガイドラインは、非心臓手術を受ける18歳以上の成人患者に対する心血管の評価と管理に関するもので、術前から術後までのリスクや機能状態の評価、心血管検査の適切な使用、心血管の状態やリスクの管理から、エビデンスに基づいた薬物療法や周術期モニタリング、デバイスの使用などを内容に含んでいる。重要事項は以下の通り。・本ガイドラインには、周術期のリスク評価と管理のための段階的なアプローチがフレームワークで提示されており、医師が手術を進めるべきか、追加評価のために手術計画をいったん止めるべきかを判断するのに役立つ。・非心臓手術を受ける患者に対する心血管のスクリーニングと治療は、非手術患者と同じ適応基準に従い、手術の遅れと治療およびスクリーニングの過剰を回避するために、タイミングと方法を慎重に検討した上で実施する必要がある。・ストレステストは、特に、非心臓手術が予定されている低リスク患者と、手術予定の有無に関係なくストレステストの実施が適切と判断される患者に対してのみ、慎重に実施するべきである。・病変が解剖学的に複雑な患者や不安定な心血管疾患を持つ患者を管理する場合、チームベースのケアを重視する必要がある。・糖尿病、心不全、肥満の管理に使われているナトリウムグルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)は、周術期に重大な影響を及ぼす。SGLT2iを使用している患者における周術期ケトアシドーシスリスクを最小限に抑えるには、手術の3~4日前に服薬を中止する必要がある。・非心臓手術後の心筋障害は、新たに特定された疾患プロセスであり、死亡も含むさまざまな悪影響を患者にもたらすため、無視してはならない。・非心臓手術中または手術後に新たに心房細動と診断された患者は、脳卒中リスクが高まっている。こうした患者に対しては、術後に不整脈の可逆的な原因を治療し、リズムコントロールや長期的な抗凝固療法の必要性を評価するために、注意深く経過観察するべきである。・周術期における経口抗凝固療法のブリッジング(ヘパリンへの置換療法)は、血栓性合併症のリスクが最も高い患者にのみ実施すべきであり、大多数の患者では推奨されない。・原因不明の不安定な血行動態を持つ患者に対しては、専門知識を有する医療従事者がいる場合には周術期評価に緊急の心エコーFoCUS(focused cardiac ultrasound)を用いてもよい。ただし、FoCUSは包括的な経胸壁心エコー検査の代わりにはならない。Thompson氏は、「この新しいガイドラインは、周術期患者を管理する臨床医に情報を提供するための最新研究に基づく包括的な指針であり、患者の健康を回復させ、心血管系の合併症を最小限に抑えることを最終目標としている」と述べている。なお、複数の著者が、バイオ医薬品企業および医療機器企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年10月1日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/aha-and-acc-update-cardiovascular-management-guideline-for-noncardiac-surgeryCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
米デューク大学病院のAnnemarie Thompson氏らが、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)が2014年に発行した「非心臓手術患者の周術期の心血管疾患の評価および管理に関するガイドライン2014年版」を、2022年8月から2023年3月にかけて実施した新たなレビュー結果を踏まえて改訂し、「Circulation」および「Journal of the American College of Cardiology」に9月24日発表した。このガイドラインは、非心臓手術を受ける18歳以上の成人患者に対する心血管の評価と管理に関するもので、術前から術後までのリスクや機能状態の評価、心血管検査の適切な使用、心血管の状態やリスクの管理から、エビデンスに基づいた薬物療法や周術期モニタリング、デバイスの使用などを内容に含んでいる。重要事項は以下の通り。・本ガイドラインには、周術期のリスク評価と管理のための段階的なアプローチがフレームワークで提示されており、医師が手術を進めるべきか、追加評価のために手術計画をいったん止めるべきかを判断するのに役立つ。・非心臓手術を受ける患者に対する心血管のスクリーニングと治療は、非手術患者と同じ適応基準に従い、手術の遅れと治療およびスクリーニングの過剰を回避するために、タイミングと方法を慎重に検討した上で実施する必要がある。・ストレステストは、特に、非心臓手術が予定されている低リスク患者と、手術予定の有無に関係なくストレステストの実施が適切と判断される患者に対してのみ、慎重に実施するべきである。・病変が解剖学的に複雑な患者や不安定な心血管疾患を持つ患者を管理する場合、チームベースのケアを重視する必要がある。・糖尿病、心不全、肥満の管理に使われているナトリウムグルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i)は、周術期に重大な影響を及ぼす。SGLT2iを使用している患者における周術期ケトアシドーシスリスクを最小限に抑えるには、手術の3~4日前に服薬を中止する必要がある。・非心臓手術後の心筋障害は、新たに特定された疾患プロセスであり、死亡も含むさまざまな悪影響を患者にもたらすため、無視してはならない。・非心臓手術中または手術後に新たに心房細動と診断された患者は、脳卒中リスクが高まっている。こうした患者に対しては、術後に不整脈の可逆的な原因を治療し、リズムコントロールや長期的な抗凝固療法の必要性を評価するために、注意深く経過観察するべきである。・周術期における経口抗凝固療法のブリッジング(ヘパリンへの置換療法)は、血栓性合併症のリスクが最も高い患者にのみ実施すべきであり、大多数の患者では推奨されない。・原因不明の不安定な血行動態を持つ患者に対しては、専門知識を有する医療従事者がいる場合には周術期評価に緊急の心エコーFoCUS(focused cardiac ultrasound)を用いてもよい。ただし、FoCUSは包括的な経胸壁心エコー検査の代わりにはならない。Thompson氏は、「この新しいガイドラインは、周術期患者を管理する臨床医に情報を提供するための最新研究に基づく包括的な指針であり、患者の健康を回復させ、心血管系の合併症を最小限に抑えることを最終目標としている」と述べている。なお、複数の著者が、バイオ医薬品企業および医療機器企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年10月1日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/aha-and-acc-update-cardiovascular-management-guideline-for-noncardiac-surgeryCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock