抗精神病薬を使用している患者において、HDL-C低値と運動障害リスクとの間に有意な関連は認められないことが、「Innovations in Clinical Neuroscience」に6月1日掲載された論文で明らかにされた。抗精神病薬を使用すると、副作用として薬物誘発性パーキンソニズムや遅発性ジスキネジアなどの運動障害や錐体外路障害が生じることはよく知られている。また、HDL-Cの低値(男性で40mg/dL未満、女性で50mg/dL未満)とパーキンソン病リスク上昇との関連も示唆されている。これらのことを踏まえて、米エドワード・ハインズ・ジュニア退役軍人局病院のCarolyn O'Donnell氏らは、HDL-C値の低い患者における抗精神病薬の使用と運動障害のリスクとの関連を検討した。対象としたのは1種類以上の抗精神病薬を使用している州立精神科入院施設の成人患者89人(19〜77歳、男性60%)であった。これらの患者は、入院時とその後のルーチンの検査で、HDL-C値の測定や異常不随意運動スケール(Abnormal Involuntary Movement Scale;AIMS)による運動障害の評価を受けていた。HDL-C値は各年における平均値を採用した。HDL-C値とAIMSスコアの解析には、不等分散の両側t検定を用いた。診断名として多かったのは統合失調症(47人、53%)、統合失調感情障害(34人、38%)、大麻使用障害(18人、20%)であった。対象者のHDL-C値は17〜83mg/dLの範囲で、HDL-C低値が認められたのは34人、AIMSスコアが0を超えた患者はわずか8人であった。患者の運動障害、AIMSスコア、HDL-C値を比較した結果、HDL-C値が患者の運動障害に影響を与えたことを示唆する統計的有意差は認められなかった。著者らは、「薬剤誘発性の運動障害は、早期に発見することで迅速に介入することができ、身体的な外観の変化や衰弱の原因となる錐体外路障害のリスクを軽減し得る。HDL-Cなどの生理的な要因についての仮説を探求する方向に進むのではなく、患者に問題を起こす薬剤を与えないような処方を第一に考えるべきである」と述べている。(HealthDay News 2024年9月20日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/study-reveals-no-link-between-hdl-cholesterol-and-movement-disordersCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
抗精神病薬を使用している患者において、HDL-C低値と運動障害リスクとの間に有意な関連は認められないことが、「Innovations in Clinical Neuroscience」に6月1日掲載された論文で明らかにされた。抗精神病薬を使用すると、副作用として薬物誘発性パーキンソニズムや遅発性ジスキネジアなどの運動障害や錐体外路障害が生じることはよく知られている。また、HDL-Cの低値(男性で40mg/dL未満、女性で50mg/dL未満)とパーキンソン病リスク上昇との関連も示唆されている。これらのことを踏まえて、米エドワード・ハインズ・ジュニア退役軍人局病院のCarolyn O'Donnell氏らは、HDL-C値の低い患者における抗精神病薬の使用と運動障害のリスクとの関連を検討した。対象としたのは1種類以上の抗精神病薬を使用している州立精神科入院施設の成人患者89人(19〜77歳、男性60%)であった。これらの患者は、入院時とその後のルーチンの検査で、HDL-C値の測定や異常不随意運動スケール(Abnormal Involuntary Movement Scale;AIMS)による運動障害の評価を受けていた。HDL-C値は各年における平均値を採用した。HDL-C値とAIMSスコアの解析には、不等分散の両側t検定を用いた。診断名として多かったのは統合失調症(47人、53%)、統合失調感情障害(34人、38%)、大麻使用障害(18人、20%)であった。対象者のHDL-C値は17〜83mg/dLの範囲で、HDL-C低値が認められたのは34人、AIMSスコアが0を超えた患者はわずか8人であった。患者の運動障害、AIMSスコア、HDL-C値を比較した結果、HDL-C値が患者の運動障害に影響を与えたことを示唆する統計的有意差は認められなかった。著者らは、「薬剤誘発性の運動障害は、早期に発見することで迅速に介入することができ、身体的な外観の変化や衰弱の原因となる錐体外路障害のリスクを軽減し得る。HDL-Cなどの生理的な要因についての仮説を探求する方向に進むのではなく、患者に問題を起こす薬剤を与えないような処方を第一に考えるべきである」と述べている。(HealthDay News 2024年9月20日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/study-reveals-no-link-between-hdl-cholesterol-and-movement-disordersCopyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock