子どもの近視が世界的に増えているとする、中山大学(中国)のJinghong Liang氏らによる研究結果が「British Journal of Ophthalmology」に9月24日掲載された。特に東アジアや都市部の居住者、女性などで近視の有病率が高いという。近視は小児期に発症し成人期への成長過程で視力低下が進行することが多い。小児期は視機能の発達段階にあって可塑性を有していること、この時期の視力は環境因子に影響されやすいことなどから、子どもの近視は公衆衛生上の重要な課題と言える。しかし、子どもの近視の有病率に関する最も新しい文献レビューによる検討は、2015年までに報告された研究を対象としたものであり、近年の有病率の変化は分かっていない。これを背景としてLiang氏らは、2015年以降の報告も含めて新たに文献レビューを行った。PubMed、Embase、Web of Scienceなどの文献データベースを用いて、2023年6月27日までに報告された、5~19歳における近視有病率を検討し英語または中国語で報告されている論文を検索。有病率の検討に適さないランダム化比較試験や縦断研究、症例対照研究、および、器質的疾患や精神疾患を有する対象での研究などは除外し、最終的に276報、311件の研究を適格と判定した。これらの研究は50カ国から報告されていて、参加者数は合計541万945人だった。近視の定義は等価球面度数が-0.5D以下とした。子どもの近視の有病率は、過去30年間で顕著に上昇していることが明らかになった。具体的には、1990~2000年の有病率は24.32%(95%信頼区間15.23~33.40)であるのに対して、2020~2023年は35.81%(同31.70~39.91)だった。直近の有病率を国別に見た場合、日本が85.95%(84.14~87.76)で最多であり、次いで韓国(73.94%)、ロシア(46.17%)と続いた。また各国の経済発展段階での比較では、先進国の23.81%に対して、非先進国は31.89%と高かった。背景因子をより詳細に検討すると、東アジア(35.22%)や都市部居住者(28.55%)、女性(33.57%)などで、高い有病率が観察された。これらのデータを基に今後の推移を予測した結果、2040年に世界の子どもたちの近視有病率は36.59%、2050年には39.80%に達する可能性が示された。特に女性の有病率がより大きく上昇し(2050年で女性41.95%、男性37.34%)、年齢層別では6~12歳(2050年で27.47%)に比較し13~19歳(同52.38%)での有病率がより高まると予測された。著者らは、「近未来に子どもたちの近視が、世界的な健康課題になる可能性を認識することが極めて重要である。この傾向に対処するには、さらなる研究により、それぞれの地域に特化した効果的なアプローチを模索し、地域ごとの公衆衛生戦略を確立する必要がある」と述べている。(HealthDay News 2024年9月25日)https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/global-prevalence-of-child-myopia-is-increasingCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock