肺がんスクリーニング時の低線量胸部CTにより検出された広範な冠動脈石灰化は、あらゆる原因による死亡(全死亡)および心血管イベントの独立した予測因子であるとする研究結果が、「CMAJ(Canadian Medical Association Journal)」に12月2日掲載された。オタワ大学(カナダ)心臓研究所のMarcella Cabral Caires氏らは、肺がんリスクの高い集団における冠動脈石灰化の有病率と予後評価における有用性を検討した。対象は、2017年3月から2018年11月にかけて、オタワ病院を拠点とするOntario Health Lung Cancer Screening Pilot for People at High Riskの一環として、肺がんのスクリーニングのためにCT検査を受けた、症状のない連続した1,486人(平均年齢66歳±5.4歳、男性51.5%、現喫煙者68.4%)とした。CT画像は、低線量(100~120kVp、60~80mA)の造影剤を使用しない、非同期胸部ヘリカルCTスキャンにより1回の吸気停止下で実施して取得されたものだった。対象者の冠動脈石灰化の有無と程度は、推定Agatstonスコアにより視覚的に定量化された。Agatstonスコアは、高スコアほど冠動脈石灰化の範囲が広く、心血管イベントリスクが高いことを意味する。主要な4つの冠動脈(左冠動脈主幹部、左前下行枝、左回旋枝、右冠動脈)をそれぞれ3つのセグメントに分割した。各セグメントに石灰化が認められる場合に1点を加算してスコアを算出し(最高得点12点)、対象者を「冠動脈石灰化なし(0点)」「軽度~中等度の冠動脈石灰化(1~5点;Agatstonスコア1~400点)」「広範な冠動脈石灰化(6点以上;Agatstonスコア400点超)」の3群に分類した。オタワ病院の電子医療記録を用いて、2023年12月21日までに生じた肺がん、心血管イベント(非致死的な心筋梗塞、選択的血行再建術、脳卒中)、および死亡について調査した。その結果、1486人中793人(53.4%)に軽度〜中等度の冠動脈石灰化、439人(29.5%)に広範な冠動脈石灰化が確認された。臨床的な心血管リスク因子で調整したCox比例ハザードモデル解析の結果、広範な冠動脈石灰化と全死亡および心血管イベントの複合アウトカムとの間に有意な関連が認められ(ハザード比〔HR〕2.13、95%信頼区間〔CI〕1.35~3.38)、広範な冠動脈石灰化がこれらのアウトカムの独立した予測因子であることが示唆された。また、広範な冠動脈石灰化は、全死亡(同2.39、CI1.34~4.27)、心血管イベント(同2.06、1.13~3.77)とも有意に関連していた。広範な冠動脈石灰化と心血管イベントとの関連は、非心血管死(がんによる死亡ほか)を競合リスクとして調整後も依然として統計学的に有意であった(同2.05、1.09〜3.85)。著者らは、「がんやその他の非心血管死があっても、広範な冠動脈石灰化は心血管イベントや全死亡の予測因子となることが示された。今後は、偶発的に冠動脈石灰化が発見された際に取るべき適切な臨床上の対応について調査する前向き研究の実施が必要である」と述べている。なお、複数の著者が、バイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2024年12月2日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/extensive-coronary-artery-calcium-on-chest-ct-prognostic-for-death-cvdCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock