てんかんを有する小児、および親などその介護者に対し調査を行ったところ、「障害の存在」が、子および親の生活の質(QOL)をも低下させ、また介護者の負担を増加させていることが、「Epilepsy & Behavior」に1月2日掲載された研究で明らかになった。大阪市立総合医療センターの岡崎伸氏らは、2023年3月から2023年5月の間に実施された横断的なオンライン調査の二次解析を行い、てんかんを有する小児(18歳未満)とその介護者のQOLを評価した。対象は、てんかんと診断された小児1,147人(女児60.2%)、およびその介護者1,147人(18歳超、両親99.7%、女性87.4%)であった。小児のQOLは、小児てんかんにおけるQOL評価尺度日本語版の短縮版(QOLCE-Js52)の日常生活サブセットを用いて評価した(0〜100点、スコアが低いほどQOLが低い)。その結果、平均(標準偏差〔SD〕)は68.3(14.2)点であった。介護者のQOLは、Short Form-8(SF-8)の身体的コンポーネントサマリー(PCS)と精神的コンポーネントサマリー(MCS)を用いて評価した(PCSスコアもMCSスコアも、50点以下なら2017年の日本の一般集団の平均より低い)。その結果、PCSとMCSの平均(SD)はそれぞれ46.5(4.5)点と43.7(5.1)点で、いずれも一般集団より有意に低かった(P<0.001、Welchのt検定)。介護者の負担は、Zarit介護負担尺度日本語版の短縮版(J-ZBI_8)を用いて評価した(0〜32点、スコアが高いほど負担が大きい)。その結果、平均(SD)は4.9(7.1)点で、13点以上の介護者は13.2%(13~16点5.4%、17点以上7.8%)を占めたが、これは抑うつ状態である可能性を示すものである。多変量線形回帰分析により小児と介護者のQOLおよび介護者の負担に関連する因子を検討した。その結果、「障害の存在」は、小児のQOL低下(偏回帰係数〔B〕=−7.336、95%信頼区間〔CI〕−9.481〜−5.191、P<0.001)、介護者のQOLのうちPCSスコア低下(同−1.385、−2.138〜−0.632、P<0.001)、および介護者の負担増加(同4.746、3.87〜5.623、P<0.001)において、有意に関連する因子として特定された。この他、小児のQOL低下と強く関連したのは、最大持続時間が5分以上の発作(B=−5.003、95%CI −7.334~−2.672、P<0.001)、転倒を伴う発作(同−4.234、−5.974~−2.494、P<0.001)、および月1回以上の医療機関受診(同−3.989、−6.238~−1.740、P=0.001)であった。介護者のPCSスコアの低下と強く関連したのは、レスキュー薬を使用しても10分以上続く発作(同−1.051、−1.618~−0.484、P<0.001)であり、介護者のMCSスコアの低下と強く関連したのは、1日に2回以上の発作(同−1.762、−2.578~−0.946、P<0.001)、および救急搬送(同−1.456、−2.107~−0.805、P<0.001)であった。一方、介護者の負担増加と強く関連したのは、最大持続時間が5分以上の発作(同4.936、3.933~5.938、P<0.001)と複数の抗てんかん薬の使用(同1.831、1.019~2.644、P<0.001)であった。著者らは、「今回の結果から、てんかんを有する小児の介護が介護者の心身の健康に大きな影響を与えているのは明らかだ」と述べている。なお、複数の著者が、この研究に資金を提供したAculys Pharma社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年1月9日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/epilepsy-in-children-linked-to-lower-qol-and-caregiver-strainCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
てんかんを有する小児、および親などその介護者に対し調査を行ったところ、「障害の存在」が、子および親の生活の質(QOL)をも低下させ、また介護者の負担を増加させていることが、「Epilepsy & Behavior」に1月2日掲載された研究で明らかになった。大阪市立総合医療センターの岡崎伸氏らは、2023年3月から2023年5月の間に実施された横断的なオンライン調査の二次解析を行い、てんかんを有する小児(18歳未満)とその介護者のQOLを評価した。対象は、てんかんと診断された小児1,147人(女児60.2%)、およびその介護者1,147人(18歳超、両親99.7%、女性87.4%)であった。小児のQOLは、小児てんかんにおけるQOL評価尺度日本語版の短縮版(QOLCE-Js52)の日常生活サブセットを用いて評価した(0〜100点、スコアが低いほどQOLが低い)。その結果、平均(標準偏差〔SD〕)は68.3(14.2)点であった。介護者のQOLは、Short Form-8(SF-8)の身体的コンポーネントサマリー(PCS)と精神的コンポーネントサマリー(MCS)を用いて評価した(PCSスコアもMCSスコアも、50点以下なら2017年の日本の一般集団の平均より低い)。その結果、PCSとMCSの平均(SD)はそれぞれ46.5(4.5)点と43.7(5.1)点で、いずれも一般集団より有意に低かった(P<0.001、Welchのt検定)。介護者の負担は、Zarit介護負担尺度日本語版の短縮版(J-ZBI_8)を用いて評価した(0〜32点、スコアが高いほど負担が大きい)。その結果、平均(SD)は4.9(7.1)点で、13点以上の介護者は13.2%(13~16点5.4%、17点以上7.8%)を占めたが、これは抑うつ状態である可能性を示すものである。多変量線形回帰分析により小児と介護者のQOLおよび介護者の負担に関連する因子を検討した。その結果、「障害の存在」は、小児のQOL低下(偏回帰係数〔B〕=−7.336、95%信頼区間〔CI〕−9.481〜−5.191、P<0.001)、介護者のQOLのうちPCSスコア低下(同−1.385、−2.138〜−0.632、P<0.001)、および介護者の負担増加(同4.746、3.87〜5.623、P<0.001)において、有意に関連する因子として特定された。この他、小児のQOL低下と強く関連したのは、最大持続時間が5分以上の発作(B=−5.003、95%CI −7.334~−2.672、P<0.001)、転倒を伴う発作(同−4.234、−5.974~−2.494、P<0.001)、および月1回以上の医療機関受診(同−3.989、−6.238~−1.740、P=0.001)であった。介護者のPCSスコアの低下と強く関連したのは、レスキュー薬を使用しても10分以上続く発作(同−1.051、−1.618~−0.484、P<0.001)であり、介護者のMCSスコアの低下と強く関連したのは、1日に2回以上の発作(同−1.762、−2.578~−0.946、P<0.001)、および救急搬送(同−1.456、−2.107~−0.805、P<0.001)であった。一方、介護者の負担増加と強く関連したのは、最大持続時間が5分以上の発作(同4.936、3.933~5.938、P<0.001)と複数の抗てんかん薬の使用(同1.831、1.019~2.644、P<0.001)であった。著者らは、「今回の結果から、てんかんを有する小児の介護が介護者の心身の健康に大きな影響を与えているのは明らかだ」と述べている。なお、複数の著者が、この研究に資金を提供したAculys Pharma社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年1月9日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/epilepsy-in-children-linked-to-lower-qol-and-caregiver-strainCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock